企業間信用とは

【企業間信用とは】商業信用の仕組みと企業経営における重要性をわかりやすく解説

企業の資金繰りや経営を理解するうえで欠かせないのが「企業間信用(商業信用)」です。
銀行からの融資だけでなく、実は企業同士の取引の中にも“信用”による資金の流れが存在しています。

この記事では、企業間信用とは何か、その仕組み・メリット・リスク、そして実際の会計処理までを専門家の視点からわかりやすく解説します。

🔹企業間信用(商業信用)とは?

企業間信用(きぎょうかんしんよう)とは、企業同士の取引において、商品の販売やサービス提供に対する支払いを一定期間猶予することを指します。
つまり、売り手が買い手に「あとで支払ってもいいですよ」と信用を与える取引形態のことです。

このような信用取引は「商業信用」とも呼ばれ、売り手が受取手形や売掛金として債権を持ち、買い手が買掛金や支払手形を負うことで成り立っています。

🔹企業間信用の仕組み

企業間信用の典型的な流れを簡単に説明しましょう。

  1. A社がB社に商品を販売(例:100万円分)

  2. 代金は「掛け取引」として、支払いは1か月後に設定

  3. A社の帳簿では「売掛金100万円」、B社の帳簿では「買掛金100万円」として記録

  4. 支払期日になったらB社がA社へ代金を支払う

このように、企業間で“支払いを待つ”という信用を前提に資金が動くのが企業間信用の特徴です。

🔹企業間信用のメリット

✅ 資金繰りの安定

買い手企業は、商品を仕入れてから販売・入金を得るまでの間、支払いを猶予してもらうことで資金繰りが安定します。

✅ 売り手企業の販売拡大

支払い条件を柔軟にすることで、取引先との関係を強化し、新規顧客を獲得しやすくなります。

✅ 金融機関を介さない資金調達

銀行からの借入に頼らず、取引先から間接的に資金援助を受ける形になるため、迅速で柔軟な資金調達手段として有効です。

🔹企業間信用のリスクと注意点

企業間信用にはメリットだけでなく、リスクも存在します。

  • 取引先の経営悪化により代金が回収できなくなるリスク(貸倒リスク)

  • 信用を与えすぎると、自社の運転資金が不足する可能性

  • 支払遅延が連鎖すると、業界全体の資金繰りに影響することも

そのため、与信管理(取引先の信用調査)を適切に行い、売掛金の回収可能性を常に確認することが大切です。

🔹企業間信用とバランスシート上の処理

会計上、企業間信用は次のように表されます。

  • 売り手側:売掛金 または 受取手形(資産項目)

  • 買い手側:買掛金 または 支払手形(負債項目)

これにより、企業の信用取引の規模が貸借対照表(バランスシート)上に明確に反映されます。
企業の財務分析では、売掛金・買掛金の回転期間を確認することで、信用取引の健全性を判断することができます。

🔹近年の動向:直接金融とのバランス

近年では、企業間信用(間接的な資金供与)だけでなく、社債発行やクラウドファンディングなどの直接金融による資金調達が増加しています。
しかし、中小企業を中心に、取引先との信頼関係を基盤とする企業間信用は依然として重要な資金調達手段です。

🔹まとめ:企業間信用は「取引先との信頼」が資金を動かす

企業間信用とは、単なる支払い猶予ではなく、信頼をベースとした資金の流れです。
上手に活用すれば資金繰りを安定させ、経営の柔軟性を高めることができます。
一方で、信用リスク管理を怠ると、倒産リスクにもつながりかねません。

企業経営においては、「信用を築く」「信用を管理する」という2つの視点を常に意識しておくことが重要です。

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