個人事業主や副業をしている方にとって、「事業所得」と「雑所得」の違いは非常に重要です。
所得の種類によって、確定申告の方法や税金の計算が変わるため、正しく理解しておく必要があります。
本記事では、事業所得の定義、計算方法、税金の仕組み、確定申告の進め方まで、初心者にもわかりやすく解説します。
事業所得とは?
事業所得とは、個人が卸売業、小売業、農業、サービス業などの事業から得た所得を指します。ただし、不動産の貸付や山林所得、譲渡所得などは除かれます。
ポイント
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所得税の対象は10種類。その中で雑所得は、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得以外の所得を指します。
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副業や年金収入など、事業として反復継続していない収入は雑所得に分類されます。
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事業所得の認定には「独立性」「営利性」「反復継続性」「社会的地位」が客観的に認められる必要があります(最高裁判例 昭和56年4月24日)。
事業所得の計算方法
事業所得の基本的な計算式は次の通りです。
総収入金額に含まれるもの
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事業活動で得た現金収入
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商品やサービスを金銭以外で受け取った場合の評価額
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保険金や賠償金、リベート収入など
必要経費に含まれるもの
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商品仕入代金(売上原価)
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給与、旅費交通費、交際費
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家賃、水道光熱費など、事業に関連する部分(家事関連費の按分が必要)
※事業用の車両を売却した場合は譲渡所得、預貯金の利息は利子所得として扱われます。
事業所得にかかる税金の仕組み
事業所得では、損益計算書や収支内訳書を作成し、確定申告書(第一表・第二表)に転記して申告します。所得が赤字の場合は第三表も作成します。
損益通算
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不動産所得や譲渡所得の損失は、他の所得の黒字から差し引くことが可能です。
所得税の税率
所得税は5%~45%の累進課税制度です。
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円~17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁「所得税の税率」
事業所得か雑所得かの判断基準
個人事業主の場合
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事業として独立・営利・反復継続が認められる場合は事業所得
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関連性が薄い副収入は雑所得
会社員の副業の場合
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FX、株式、有価証券取引など投機性の高い副業は、事業所得と認められないケースが多い
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安定的に収入が得られ、業務に必要な設備や資金を整えた場合のみ事業所得と認められる可能性
個人事業主・副収入のある会社員が事業所得で申告するメリット
青色申告制度の特典
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複式簿記で記帳すれば、最大65万円の控除
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家族従業者への給与を経費として計上可能
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貸倒引当金を経費計上できる
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赤字の繰越・繰戻しによる税負担軽減
白色申告制度
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青色申告に比べ控除は少ないが、専従者控除などの特例あり
事業所得の確定申告の進め方
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収支内訳書・青色申告決算書の作成
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収支内訳書は2ページ目から作成し、合計額を1ページ目に転記するとスムーズ
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確定申告書への転記
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収支内訳書の「収入金額」と「所得金額」を第一表に転記
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その他の所得も追記して完成
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はじめての確定申告でも、マネーフォワード クラウド確定申告などの会計ソフトを活用すれば、銀行・カード明細の自動取得や仕訳の自動作成で作業時間を大幅に短縮できます。
まとめ:事業所得を正しく申告し、メリットを最大化しよう
事業所得は雑所得と違い、青色申告の特典や損益通算など、節税メリットが大きい所得です。
副業や個人事業主として収入を得ている場合は、まず税務署や専門家に相談し、必要に応じて開業届を提出しましょう。
正確な帳簿を作り、青色申告を活用することで、はじめての確定申告も安心して行えます。
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