企業が火災や地震などの災害に備えて加入する損害保険。
実際に事故や災害が発生した際、保険会社から支払われる保険金の金額が実際の被害額を上回ることがあります。このときに生じる利益を「保険差益」といいます。
本記事では、保険差益の意味や会計処理の考え方、そして企業が注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
保険差益とは
保険差益とは、損害保険によって支払われた保険金の金額が、実際の損失額よりも多かった場合に発生する差額の利益を指します。
たとえば、火災により建物が500万円分損壊し、保険会社から600万円の保険金が支払われた場合、その差額100万円が「保険差益」となります。
この保険差益は、偶発的に発生する一時的な利益であり、日常的な営業活動による収益とは区別して会計処理を行います。
保険差益の会計処理
保険差益が発生した場合、企業会計上は「特別利益」として処理するのが一般的です。
仕訳の例を見てみましょう。
【例】
火災により建物の一部が損壊し、修繕費として300万円を支出した。保険会社から補償金として400万円を受け取った場合。
仕訳は次のようになります。
このように、受け取った保険金が実際の修繕費より多い分(100万円)を「保険差益」として計上します。
税務上の扱い
税務上も、保険差益は課税対象となる「益金(収益)」に含まれます。
したがって、法人税等の計算においては、保険差益を含めた利益に対して課税が行われます。
ただし、保険差益が発生した原因が固定資産の損壊であり、保険金で新たに資産を取得した場合などは、課税の繰り延べが認められるケースもあります。
具体的には「圧縮記帳」という方法を用いて、課税負担を軽減することが可能です。
保険差益を得るリスクと注意点
一見すると「保険差益」は利益に見えますが、実際には保険事故という予測不能な損害を前提としています。
そのため、保険差益を期待して過大な保険に加入するのは適切ではありません。
企業としては、保険料のコスト、損害発生リスク、財務への影響を総合的に判断し、必要な補償範囲を見極めることが大切です。
また、保険差益が発生した場合には、臨時的な利益であることを認識し、経営判断において過度に依存しないよう注意が必要です。
まとめ
保険差益とは、損害保険から支払われた保険金が実際の損害額を上回ることで発生する利益のことです。
企業会計では特別利益として処理され、税務上も原則として課税対象となります。
ただし、保険差益は偶発的な性質を持つため、発生した際には慎重な会計処理と経営判断が求められます。
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