会計や税務の世界では「債務確定主義」という考え方があります。
特に企業会計や所得税の処理において、費用や支出の計上タイミングを理解する上で重要です。
この記事では、債務確定主義の基本的な意味、発生主義との違い、具体的な仕訳例まで、初心者にもわかりやすく解説します。
債務確定主義とは
債務確定主義とは、取引において費用や支出の「債務」が法律上確定した時点で帳簿に計上するという会計上の原則です。
ポイントは以下の通りです。
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取引によって発生した費用の支払い義務が法的に確定した時点で計上
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権利確定主義と対をなす概念であり、どちらも法律的裏付けを重視
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所得税や法人税の税務上の収支計上にも採用される
債務確定主義の考え方を具体例で理解する
たとえば、ある会社が仕入取引を月末締めで行う場合を考えます。
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仕入を随時行い、代金は月末にまとめて支払う
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実際に現金が出るのは月末だが、仕入の時点で会社には支払い義務(債務)が発生している
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この場合、仕入の都度「借方:仕入/貸方:買掛金」として仕訳を行う
つまり、支払いがまだ行われていなくても、債務が確定している時点で費用として認識するのが債務確定主義です。
発生主義との違い
債務確定主義と似ている概念に「発生主義」があります。違いを整理すると次の通りです。
| 観点 | 債務確定主義 | 発生主義 |
|---|---|---|
| 計上の根拠 | 法律上の債務が確定した時点 | 経済的事実に基づき発生した時点 |
| 見積計上 | 法的裏付けが必要で原則不可 | 引当金など見積額で計上可能 |
| 主観性 | 少ない | 業界慣習や判断による主観が入りやすい |
| 税務上の評価 | 重視される | 一部例外的に採用される場合あり |
発生主義は経済的事実に基づき計上できるため、将来の支出や減価償却費などの見積計上が可能ですが、税務上は債務確定主義の方が優先されます。
債務確定主義を実務で活かすポイント
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仕入や費用の計上タイミングを明確にする
法的に債務が確定した日を基準に帳簿へ計上します。 -
仕訳例の理解
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借方:仕入/貸方:買掛金(仕入時点)
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借方:支払手形/貸方:買掛金(支払時点)
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税務申告への対応
発生主義による見積計上が必要な場合は、税務通達や特例を確認し、法的に認められる範囲で処理する。
まとめ
債務確定主義は「法律上の債務が確定した時点で費用を計上する」という原則です。発生主義と似ていますが、税務上の信頼性や客観性が高く、企業会計では基本となる考え方です。
特に仕入や経費の計上タイミングを正しく管理することで、帳簿の正確性が向上し、税務申告や決算書作成がスムーズになります。
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