企業の資金管理や取引で使われる「小切手」。
その中でも「先日付小切手」は、短期的な資金繰りに便利な手段として一部の企業で利用されています。しかし、会計処理や仕訳方法、メリット・デメリットを正しく理解していないと、思わぬトラブルの原因にもなります。
本記事では、先日付小切手の基本から仕訳方法、注意点まで、初心者でも理解できるように丁寧に解説します。
小切手とは?基本を押さえよう
当座預金と小切手の関係
小切手は、企業が金融機関と結ぶ「当座預金契約」がある場合にのみ振り出せる特別な決済手段です。当座預金は、口座残高があることを前提に小切手を振り出せる口座で、現金のやり取りなしに支払いを行える点が特徴です。
小切手のメリット
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現金を持ち歩く必要がないため、盗難や紛失リスクを低減
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受取人は振出日以降、いつでも小切手を取り立て可能
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簿記上は現金同等物として扱われる
小切手のデメリット
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口座残高不足で不渡りになると、信用に影響する
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不渡りが2回発生すると、金融機関取引が停止される可能性がある
先日付小切手とは?
先日付小切手は、通常の小切手と違い「振出日を将来の日付に設定する小切手」です。たとえば、今日口座残高が不足していても、数日後に入金予定がある場合に振り出すことで、代金決済を先送りできます。
先日付小切手のメリット
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短期間の資金不足を解消できる
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借入をせずに取引先への支払いが可能
注意点
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振出日には法的拘束力がないため、受取人の協力が不可欠
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信用リスクが高く、相手先との信頼関係が重要
先日付小切手の仕訳・会計処理
ここでは、仕入代金2,000,000円を先日付小切手で支払った場合の例を紹介します。
1. 先日付小切手の振り出し
小切手を振り出した側(支払側)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 2,000,000円 | 支払手形 | 2,000,000円 |
小切手を受け取った側(受取側)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 受取手形 | 2,000,000円 | 売掛金 | 2,000,000円 |
先日付小切手は約束手形と同じく信用証券として扱われます。
2. 先日付小切手の取り立て
小切手を振り出した側(支払側)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手形 | 2,000,000円 | 当座預金 | 2,000,000円 |
小切手を受け取った側(受取側)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 2,000,000円 | 受取手形 | 2,000,000円 |
先日付小切手と約束手形の違い
| 項目 | 先日付小切手 | 約束手形 |
|---|---|---|
| 支払期限 | 振出日を参考に取り立て可能 | 支払期限まで取り立て不可 |
| 法的拘束力 | なし | あり |
| 利用の信用リスク | 高い | 比較的低い |
先日付小切手は「口約束」に近い形で支払日を調整するため、信用リスクが伴います。
先日付小切手を使うときの注意点
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受取人との信頼関係を確立する
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口座残高管理を徹底する
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電子決済や代替手段の導入も検討する
なお、2026年3月末までに紙の小切手は廃止予定であり、電子記録債権(でんさい)などの決済手段への移行が進んでいます。今後は電子決済への理解も重要です。
まとめ
先日付小切手は短期的な資金繰りのために便利な手段ですが、信用リスクや会計処理の正確さが求められます。経理担当者は仕訳や勘定科目を正しく理解し、受取人との信頼関係をしっかり構築することが成功のポイントです。また、紙の小切手廃止に向けた準備や電子決済の導入も、今後の経理業務で必須となります。
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