企業の財務諸表を見ていると、利益剰余金の内訳に「別途積立金」という項目が出てくることがあります。
でも、繰越利益剰余金や利益準備金とどう違うのか、いまいちピンとこない人も多いところです。
この記事では、別途積立金の意味、位置付け、会社法との関係まで、会計の専門家として丁寧に整理していきます。
会計初心者でも理解しやすいように、具体的なイメージも交えながら解説します。
別途積立金とは?
別途積立金とは、企業会計における利益剰余金の中にある「任意積立金」の一種です。
任意積立金には修繕積立金や配当積立金など目的が明確なものがありますが、別途積立金は目的を限定しない積立金として扱われます。
貸借対照表では、純資産の部 → 利益剰余金 → その他利益剰余金に分類されるのが一般的です。
要するに、「利益の一部を、特定の使い道を決めずに将来のためにキープしておく積立金」だと考えればイメージしやすいでしょう。
別途積立金の考え方
利益剰余金は大きく分けると「繰越利益剰余金」と「任意積立金」があります。
・繰越利益剰余金
翌期以降に繰り越される利益で、株主への配当原資にも使われる。
・任意積立金
企業が独自の判断で積み立て、利益処分の対象にしない蓄え。
この任意積立金の中でも、使い道が決まっているものを「目的積立金」、使い道を限定しないものを「別途積立金」と呼びます。
別途積立金は内部留保のイメージに近く、余裕資金として配当財源や将来の投資に回す際に役立ちます。ただし、繰越利益剰余金とは会計上の位置付けも扱いも異なる点は押さえておく必要があります。
会社法における任意積立金の扱い
昔の税法では、積立金の積み立てや取り崩しは「利益処分案」を株主総会で承認して決める方式でした。しかし会社法が制定されて以降、任意積立金の一部については株主総会の決議なしで取り崩しができるようになりました。
特に以下のものは、決議が不要です。
・圧縮積立金
・特別償却準備金
(租税特別措置法に基づく準備金)
これらは会社計算規則第153条により、剰余金の増減があっても株主総会の承認を必要としません。
一方で、株主総会で設定した任意積立金についてはルールが異なります。
・目的に沿った取り崩し → 株主総会の決議不要
・目的と異なる取り崩し → 株主総会の決議が必要
別途積立金の取り扱いを誤ると、会社法違反や手続きミスにつながるおそれがあるため注意が必要です。
別途積立金が企業にもたらすメリット
初心者にもイメージしやすいように、別途積立金を積み立てるメリットを簡単にまとめておきます。
・突発的な支出に耐えられる内部留保になる
・配当財源の調整に使いやすい
・特定の目的に縛られない柔軟性がある
・財務の安定性をアピールできる
たとえば、急な設備投資や業績悪化に備えてクッションを持ちたい場合に、別途積立金は効果的です。
まとめ
別途積立金は、任意積立金の中でも目的を限定しない柔軟な積立金であり、企業の内部留保の一部として活用されます。
・目的がない積立金という点が最大の特徴
・配当財源や余裕資金として活用しやすい
・会社法上、取り崩しに株主総会の決議が必要な場合と不要な場合がある
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