券面額説とは

券面額説とは?わかりやすく解説|時価評価説との違いと会計上の扱い

企業会計や会社法における「券面額説(けんめんがくせつ)」という考え方は、特に債権を現物出資する場面やDES(デット・エクイティ・スワップ)に関係して登場します。
一見専門的な用語ですが、企業の資本取引や債務処理を理解するうえで非常に重要な考え方です。
この記事では、券面額説の意味や背景、時価評価説との違い、実務上のポイントをわかりやすく解説します。

券面額説とは

券面額説とは、債権などの借入金額を評価せず、券面上の金額(額面金額)をそのまま発行価額とみなす考え方を指します。
つまり、債権の市場価値や時価を考慮せず、「契約上の金額」を基準に処理するというものです。

この説では、会社が負っている債務を評価替えしないため、資本金や出資額を計算する際にも券面金額がそのまま採用されます。

券面額説と時価評価説の違い

券面額説に対して、時価評価説という考え方もあります。
時価評価説は、債権や借入金を「現在の市場価値」に基づいて評価する立場です。
この違いにより、同じ取引でも資産や資本の金額が異なってくることがあります。

  • 券面額説:契約上の金額(額面)で評価する

  • 時価評価説:市場価値(時価)で評価する

会社法ではどちらの説も使用できるよう、法律上の表現として「価額」という中立的な言葉が採用されています。
これは、債務者の会計処理で時価評価説が用いられるケースに合わせて調整されたものです。

DESにおける券面額説の適用

券面額説が特に注目されるのは、**DES(Debt Equity Swap:デット・エクイティ・スワップ)**のように、債権を資本と交換する取引の場合です。
現物出資型のDESでは、債権をどの価額で評価するかが問題になります。
このとき、債権の額面金額をそのまま採用するのが券面額説です。

例えば、会社が金融機関に対して1億円の債務を負っており、その債務を株式と引き換えに資本化する場合、券面額説では1億円をそのまま出資価額として扱います。
一方、時価評価説では、市場価値に基づく割引を考慮し、たとえば8,000万円などの時価で評価することになります。

券面額説の法的背景と実務上の扱い

かつては、券面額説には「資本を過大に評価し、実態を反映しないのではないか」という批判もありました。
しかし、東京地方裁判所の判決によって、この処理に法的な問題はないと判断され、現在では会計実務においても券面額説が一般的な処理方法となっています。

そのため、会社法に基づいて金銭債権を現物出資した場合には、券面額説を採用し、金銭債権の額面金額をもとに現物出資資産の価額を算出することになります。

まとめ

券面額説は、債権や借入金を評価せず、額面金額で処理する考え方です。
時価評価説と比較すると、よりシンプルで明確な評価方法といえます。
特にDESなどの現物出資取引において、実務上は券面額説が広く採用されています。
会社法でも問題がないとされているため、企業は取引内容や目的に応じて、適切に会計処理を行うことが重要です。

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