「前受金って負債なの?」
「前受収益や仮受金とどう違うの?」
「仕訳がややこしい…」
経理担当者であれば一度は悩むポイントですよね。
前受金は、企業がまだ商品やサービスを提供する前に受け取った代金を処理する勘定科目で、決算でも重要な役割を持ちます。また、似ている「前受収益」「仮受金」「預り金」と混同しやすく、誤仕訳が起こりやすい科目の代表でもあります。
この記事では、会計の専門家として、初心者でも理解できるように図解的・実務的な視点で前受金を徹底解説します。
✔この記事でわかること
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前受金とは何か(超わかりやすく)
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前受金が負債になる理由
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前払金との関係(セットで覚える)
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前受収益・仮受金・預り金・売掛金との違い
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実務で使える仕訳例
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前受金を使うシチュエーションと注意点
1. 前受金とは?【まずはやさしく解説】
前受金(まえうけきん)とは、商品やサービスを提供する前に受け取ったお金のことです。
たとえば:
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商品の頭金を受け取った
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工事代金の一部を先にもらった
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サービス提供前に全額入金された
など、「代金の一部または全部を前もって受け取った状態」を前受金で処理します。
▼イメージ
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今:お金を受け取った(現金が増える)
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未来:商品・サービスを提供する義務がある(負債)
2. 前受金はなぜ負債扱いになるの?
前受金は、貸借対照表の流動負債に分類されます。
理由はシンプルです。
▶ 商品やサービスを提供するまでは「義務」があるから
前受金=未実現の利益
将来の提供を果たして初めて「売上」にできます。
もしキャンセルがあれば、当然返金義務もありますよね。
そのため、前受金は「一時的に預かっているお金」として負債に計上されます。
▼前受金の基本仕訳(例)
ケース① 内金50,000円を受け取った場合
(150,000円の商品を後日納品)
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借方:現金 50,000
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貸方:前受金 50,000
ケース② 商品を納品し売上計上する場合
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借方:前受金 50,000
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借方:売掛金 100,000
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貸方:売上高 150,000
3. 前払金は「前受金の逆」
前受金は「お金を受け取った側」が使う科目ですが、
前払金はお金を支払った側が使う科目です。
▼よくある例
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不動産購入の手付金
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商品購入の先払い
▼前払金の仕訳例
内金50,000円を支払った場合
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借方:前払金 50,000
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貸方:現金 50,000
4. 間違えやすい勘定科目との違い
■ 4-1. 前受収益との違い
前受収益は「経過勘定」で、
期間の経過とともに収益化される金額を負債として計上します。
▼簡単にいうと
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前受金:商品を渡したら売上
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前受収益:月日が経てば売上(家賃など)
▼例:1年分の家賃を先に600,000円受け取った場合
当期3ヶ月分以外の9ヶ月分450,000円を「前受家賃」にする。
■ 4-2. 仮受金との違い
仮受金は、受け取ったお金の内容が不明のときだけ使う科目です。
▼例
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何の入金かわからないとき
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後で売掛金か前受金かが判明する
「目的が不明」のときだけ仮受金にして、判明後に消し込みます。
■ 4-3. 預り金との違い
預り金は、いつか返したり支払ったりする金銭で、
最初から収益化しません。
例:
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給与の社会保険料の従業員負担分
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取引先から預かった一時的な金銭
■ 4-4. 売掛金との違い
売掛金は「売ったけど未回収の代金」。
前受金は「まだ売ってないのに先に受け取った代金」。
5. 前受金の見分け方(実務で迷いやすいポイント)
✔ 入金の目的が明確
→ 前受金
✔ 提供期間に応じて収益計上
→ 前受収益
✔ とりあえず受け取ったが内容不明
→ 仮受金
✔ 全額返金または第三者へ支払う
→ 預り金
6. 前受金が関連する帳票
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請求書(頭金・手付金の記載がある場合)
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入金明細
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契約書(不動産・工事契約など)
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預金通帳
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注文書・受注書
7. まとめ:前受金を理解して正しい会計処理を行おう
前受金は、売上認識のタイミングにも直結する重要な勘定科目です。
特に新収益認識基準(2021年~)の導入以降は、
「いつ収益を認識するか」がより厳密に求められています。
さらに参照してください:

