取得原価とは

取得原価とは?計算方法や活用ポイントをわかりやすく解説

会計や経理、簿記の学習をしていると、「取得原価」という言葉を目にすることがあります。
取得原価とは、企業が資産を取得する際にかかった費用の総額を意味し、資産評価や財務諸表の作成で非常に重要な概念です。

本記事では、取得原価の基本から計算方法、活用ポイント、関連用語との違いまで、初心者でもわかりやすく解説します。

取得原価とは

取得原価とは、資産を取得する際に支払った金額に、必要な付随費用を加え、値引きや割戻を差し引いた総額です。

具体的には、以下のようなイメージです。

  • 資産そのものの価格

  • 運送費、関税、設置費用などの付随費用

  • 割引や値引きを差し引いた金額

取得原価は、取得原価主義(取得原価基準)に基づき計算されます。

取得原価に含まれる費用と含まれない費用

取得原価には「付随費用」が含まれますが、すべての費用が含まれるわけではありません。

取得原価に含まれるもの 取得原価に含まれないもの
購入手数料、運送費、保険料 不動産取得税、借入金利息、違約金
関税、仲介手数料 登録免許税、車両特有の費用
据え付け費、保管費 なし

取得原価の計算式と具体例

取得原価の基本計算式は以下の通りです。

取得原価 = 購入代金 + 付随費用 - 値引き・割戻

計算例

  1. 商品の購入
    購入代金100万円、付随費用10万円、値引き3万円 → 取得原価107万円

  2. 土地の購入
    購入代金1,000万円、付随費用55万円、値引き10万円 → 取得原価1,045万円

  3. 機械設備の購入
    購入代金200万円、付随費用25万円、値引き10万円 → 取得原価215万円

 

固定資産の取得方法別・取得原価の算出方法

固定資産は、購入以外にも以下の方法で取得することがあります。

1. 建設・製造した場合

自社で建設・製造した場合は、製造原価+付随費用が取得原価となります。
製造原価は、標準原価計算・実際原価計算・直接原価計算(変動原価計算)などで算出されます。

2. 株の対価として取得した場合(現物出資)

発行した株式の価額+発行手数料などが取得原価となります。

3. 交換した場合

所有していた固定資産と交換して取得した場合は、元の資産の簿価または時価が取得原価です。

4. 贈与された場合

贈与された固定資産は、公正な時価で評価された金額が取得原価となります。

取得原価主義とは

取得原価主義とは、取得原価をもとに資産を評価する会計の原則です。
この原則を用いることで、企業の財務状況を客観的かつ正確に把握でき、財務諸表の信頼性が高まります。

メリット

  • 信頼性の高い数字を算出可能

  • 客観的に検証可能

  • 財務状況を正確に把握できる

デメリット

  • 資産の取得原価が市場価値と乖離する可能性

  • 変動の大きい資産はリアルタイムでの評価が困難

 

取得原価と似た用語の違い

製造原価

製品を製造する過程でかかった費用の総額。「材料費+人件費+経費=製造原価」

売上原価

売れた商品のみにかかった費用。「期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高=売上原価」

取得原価は資産取得時、製造原価は製造時、売上原価は販売時に使われる点が異なります。

まとめ

取得原価とは、資産取得にかかった費用の総額を意味し、付随費用を含めた正確な金額を計算することが重要です。

  • 資産取得時に必要な付随費用を含める

  • 取得方法に応じた算出方法を使い分ける

  • 取得原価主義に基づき財務状況を明確に把握する

取得原価を正しく理解することで、会計処理や財務分析の精度が高まり、経営判断や投資判断にも役立ちます。

さらに参照してください:

制度会計とは?初心者にもわかる仕組みと種類を解説