商取引の現場では、商品を仕入れるたびに毎回現金で支払うとは限りません。特に企業間の取引では「支払サイト」と呼ばれる支払期日が決まっており、代金決済の手段としてよく使われてきたのが商業手形です。この記事では、商業手形の意味、約束手形と為替手形の違い、企業実務で押さえるべきポイントまで、分かりやすく解説していきます。
商業手形とは?分かりやすい基本の定義
商業手形とは、商品やサービスの売買など、実際に成立した商取引の代金を後日支払うために発行される手形のことです。簡単に言うと、「この日までに必ず代金を支払います」という証文のようなもので、企業間での信用取引を円滑にするために使われます。
商業手形は、商品の売買という“原因取引”があることで成立するため、金融取引を目的とした手形とは区別されています。そのため、商取引の延長線上で自然に発生する決済手段として扱われています。
商業手形の種類。約束手形と為替手形の違い
商業手形には、大きく分けて2種類あります。
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約束手形(プロミッサリーノート)
商品を購入した側(買い手)が、売り手に対して発行する手形。
「○月○日に代金を支払います」と買い手自身が約束する形式です。
日本の企業実務では圧倒的にこちらが多く使われてきました。 -
為替手形
売り手が買い手に対して「この手形を受け取った人に支払いを行ってください」と指図する形で振り出す手形。
買い手が承認すると効力が生まれます。
海外取引や金融実務でも使われますが、国内では約束手形ほど一般的ではありません。
商業手形が使われる理由。企業にとってのメリット
商取引には、すぐに現金を用意できないケースも多くあります。商業手形は、そうした場合に「信用」をベースに代金支払いを後日に回しつつ、売り手側も回収の見通しを立てやすい仕組みとして利用されてきました。
メリットには以下のような点があります。
・短期間で確実に代金回収できる可能性が高い
・裏書による譲渡が可能で、仕入先などへの支払いにも利用できる
・万が一買い手が支払不能になっても、裏書人に請求できる
・商品販売から代金回収までの資金繰りが読みやすい
特に、裏書の仕組みは手形特有の大きな利点で、資金の流れをスムーズにしやすいという特徴があります。
商業手形はリスクゼロではない。実務で注意したいポイント
便利な一方で「不渡り」と呼ばれる支払不能のリスクがあります。不渡りが起きると、売り手は代金を回収できずに資金繰りが悪化し、場合によっては連鎖倒産を招くこともあります。
そのため、実務では以下の点に注意する必要があります。
・取引先の信用調査
・期日管理の徹底
・裏書譲渡の連鎖状況
・手形割引のコスト
・不渡り事故情報の確認
最近では電子記録債権(でんさい)など、手形の代替手段も普及してきていますが、商業手形の基本は今も多くの企業に関係します。
まとめ。商業手形は企業間の信用を支える伝統的な決済手段
商業手形は、企業間取引をスムーズにする重要な決済手段で、約束手形と為替手形の2種類があります。信用取引や資金繰りの中核を担う反面、不渡りなどのリスクもあるため、仕組みをしっかり理解しておくことが大切です。
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