企業の経営状況をチェックするとき、「固定比率」という指標を耳にすることがあります。特に経理担当者や経営者にとって、会社の長期的な支払能力を知るために重要な数字です。
しかし、「固定比率って何?」「どうやって計算するの?」「高い場合はどうしたらいいの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、固定比率の基本から計算方法、目安、改善方法まで、初心者にもわかりやすく解説します。
1. 固定比率とは
固定比率とは、自己資本に対して固定資産がどの程度あるかを示す指標です。簡単に言えば、「返済義務のない自己資本で固定資産をどれだけ支えているか」を表します。
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固定資産:土地・建物・設備・無形固定資産など、決算日から1年以内に現金化できない資産
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自己資本:株主からの出資や利益の積み立てで、返済義務のない資本
固定比率を見ることで、会社の長期的な支払能力を判断できます。一般的に、固定比率は100%以下が望ましいとされています。
例:自己資本100万円に対して固定資産が80万円なら、固定比率は80%で安全性が高いと判断できます。
2. 固定比率の計算方法
固定比率の計算式は以下の通りです。
固定比率(%) = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100
計算例
貸借対照表(B/S)の一部:
| 資産 | 金額 | 負債・資本 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 流動資産 | 90 | 流動負債 | 70 |
| 固定資産 | 110 | 固定負債 | 30 |
| 自己資本 | 100 | ||
| 合計 | 200 | 合計 | 200 |
この場合、
→ 100%を超えているので、安全性には少し注意が必要ですが、固定負債30と自己資本100の合計130が固定資産110を上回っているため、長期的には問題ない場合もあります。
3. 固定比率の目安
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100%以下:安全性が高く、長期的な支払能力に問題なし
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100%超:自己資本だけでは固定資産を賄えていない状態。危険度が高くなる可能性あり
ただし、固定比率だけで判断するのは危険です。流動比率や固定長期適合率と組み合わせて確認することが重要です。
4. 固定比率が高い場合の改善方法
固定比率が高いと、会社の長期的支払能力にリスクがある可能性があります。改善策は主に2つです。
(1) 固定資産を減少させる
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除却・売却:使っていない遊休資産を売却
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使用を続ける:減価償却で固定資産の帳簿価額を徐々に減少させる
(2) 自己資本を増加させる
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増資:株式発行や出資金の増加
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配当金の抑制:利益を会社に留保(内部留保)して自己資本を増やす
5. 固定比率に関連する指標
固定比率のデメリットは「負債を考慮しない」点です。そのため、以下の指標も一緒にチェックすると安心です。
流動比率
短期的な支払能力を表す指標。
目安:200%以上で安全、100%未満は要注意
固定長期適合率
自己資本+固定負債で固定資産を賄えているかを示す指標。
目安:100%以下が望ましい
6. 固定比率の業界平均(参考)
| 業種 | 固定比率(%) | 流動比率(%) | 固定長期適合率(%) |
|---|---|---|---|
| 建設業 | 79.8 | 179.2 | 54.3 |
| 製造業 | 99.1 | 184.3 | 63.3 |
| 情報通信業 | 65.9 | 250.7 | 47.9 |
| 小売業 | 150.4 | 138.5 | 75.4 |
| 宿泊・飲食 | 486.5 | 112.4 | 95.5 |
※出典:中小企業実態基本調査(経済産業省)
業種によって固定比率の目安は変わるため、同業種の平均と比較することが大切です。
まとめ
固定比率は、自己資本に対する固定資産の割合を示す長期的な安全性指標です。
ポイントをまとめると:
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計算式:固定資産 ÷ 自己資本 × 100
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目安:100%以下が望ましい
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高い場合の改善策:固定資産を減らす、自己資本を増やす
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関連指標:流動比率・固定長期適合率も確認する
固定比率を正しく理解することで、経営判断や資金計画の精度が上がります。特に中小企業では、遊休資産や資本構成の見直しで安全性を向上させることが可能です。
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