個人事業主やフリーランスの方にとって、「将来の備え」と「節税対策」は常に大きな課題ですよね。
その両方を叶える制度が「小規模企業共済等掛金控除(しょうきぼきぎょうきょうさいとうかけきんこうじょ)」です。
この記事では、会計・税務の専門家として、制度の仕組み・対象となる掛金・控除の計算方法をわかりやすく解説します。
確定申告の際に漏れなく活用すれば、所得税・住民税の負担を大きく減らすことができる重要な控除です。
小規模企業共済等掛金控除とは?
小規模企業共済等掛金控除とは、
個人事業主や小規模企業の経営者が、将来の退職金や年金のために支払った掛金を、所得から全額控除できる制度のことです。
つまり、この制度を利用すると、掛金の分だけ課税される所得が減るため、節税効果が非常に高いのが特徴です。
なぜこの制度があるのか?
会社員には「退職金」や「企業年金」がありますが、個人事業主にはそれがありません。
そのため、事業をやめた後の生活資金を確保するには、自分で共済や年金制度に加入して積み立てる必要があります。
国は、そうした個人事業主の将来不安を軽減するため、
「共済金や個人型年金の掛金を課税対象から外す」という仕組みを設けました。
これが「小規模企業共済等掛金控除」の基本的な理念です。
控除の対象になる3つの掛金
小規模企業共済等掛金控除の対象となるのは、次の3種類の掛金です。
| 種類 | 内容 | 主な加入先・制度 |
|---|---|---|
| ① 小規模企業共済の掛金 | 個人事業主や中小企業経営者が退職金のように積み立てる共済制度 | 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 |
| ② 個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金 | 自分で運用する年金制度。老後資金の積み立て | 国民年金基金連合会 |
| ③ 心身障害者扶養共済制度の掛金 | 障害のある家族の将来を支えるための共済 | 各都道府県・政令指定都市などの地方公共団体 |
これらの掛金は、すべて「支払った金額の全額」が控除対象になります。
つまり、掛金が多いほど節税効果も大きくなるということです。
控除額の計算方法
控除額はとてもシンプルで、その年中に実際に支払った掛金の全額です。
たとえば、年間で以下の掛金を支払っていた場合:
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小規模企業共済:月額 30,000円 × 12か月 = 360,000円
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iDeCo:月額 10,000円 × 12か月 = 120,000円
この場合、
合計 480,000円 が所得から控除されます。
また、もし掛金を前納した場合は、支払額を年ごとに按分して計上する必要があります。
控除を受けるための手続き(確定申告)
小規模企業共済等掛金控除を受けるには、確定申告で控除を申請する必要があります。
申告の際には、次のような書類を提出または添付します。
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小規模企業共済掛金払込証明書(中小機構から郵送される)
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iDeCo掛金払込証明書(国民年金基金連合会から送付)
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心身障害者扶養共済の証明書(加入自治体から発行)
これらを確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」欄に記載し、添付すれば完了です。
節税効果の具体例
たとえば、年収500万円の個人事業主が年間36万円の小規模企業共済に加入している場合、
所得税と住民税を合わせて約20%とすると、
約7万2,000円の税金が軽減される計算になります。
つまり、単なる貯蓄ではなく、「積み立てながら節税できる」のが最大の魅力です。
注意点:中途解約と資金繰り
ただし、小規模企業共済は原則として長期加入を前提としています。
短期間で解約すると、元本割れする場合があるため、無理のない掛金額を設定することが大切です。
また、掛金を減額・休止することは可能ですが、再度増額する際には手続きが必要になります。
まとめ:個人事業主の強い味方「小規模企業共済等掛金控除」
小規模企業共済等掛金控除は、個人事業主やフリーランスが将来に備えながら節税できる、非常に有利な制度です。
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掛金は全額控除される
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節税しながら老後資金を準備できる
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iDeCoや障害者扶養共済も対象になる
といったメリットがあり、確定申告の際には必ず確認したい控除項目の一つです。
長期的な資産形成と税負担の軽減を両立させるためにも、今から活用を検討してみましょう。
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