企業会計において、従業員の退職金や年金制度に関わる「年金資産」は重要な項目です。
しかし、初めて会計処理を行う方にとっては、仕組みや計算方法がわかりにくいこともあります。
この記事では、年金資産の基本、計算方法、会計処理、仕訳例までをわかりやすく解説します。
年金資産とは?
年金資産とは、従業員の退職給付のために企業が積み立てている資産のことです。外部の年金基金や企業年金制度に拠出され、将来の退職金支払いの原資として利用されます。
年金資産には、以下の特徴があります。
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退職給付以外の目的で使用できない
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企業の他の資産と法的に分離されている
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企業が自由に返還・解約・目的外利用できない
具体例としては、厚生年金基金や適格退職年金制度に基づいて保有される資産が該当します。
年金資産の計算方法
年金資産の評価は期末時点の時価に基づきます。時価とは、公正な市場取引で成立する価格です。
期待運用収益の計算
年金資産は外部機関で運用されるため、毎年の運用収益も考慮する必要があります。計算式は次の通りです。
長期期待運用収益率は、過去の運用実績や市場の動向に基づき設定されます。これにより、年金資産の増減をより正確に反映できます。
年金資産の会計処理と仕訳例
企業会計では、退職給付債務を把握することが前提です。退職給付債務は以下の2つで構成されます。
年金資産の金額は、退職給付債務から控除して貸借対照表に計上されるため、原則として年金資産を直接使った仕訳は行いません。
仕訳例
たとえば、外部年金基金に10万円を拠出した場合、会計上は退職給付引当金が減少したと処理します。
| 借方 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|
| 退職給付引当金 | 現金預金 | 100,000円 |
注意点
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前払年金費用と退職給付引当金の相殺は、複数制度がある場合には原則不可
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退職給付制度ごとに独立した処理が必要
この考え方を理解しておくと、退職給付債務全体の会計処理が正確に行えるようになります。
まとめ
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年金資産は、従業員の退職給付のために積み立てられた資産
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計算は期末時点の時価と期待運用収益をもとに行う
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会計処理では退職給付債務から控除して貸借対照表に計上する
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複数制度がある場合は、制度ごとに仕訳を行う必要がある
年金資産の仕組みを理解することで、企業年金制度や退職給付の会計処理を正しく行えるようになります。経理担当者や財務担当者は、ぜひ基本を押さえて業務に活かしましょう。
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