会社設立後、すぐに事業を始められない場合に発生する「建設利息(けんせつりそく)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これはかつて商法で認められていた「繰延資産」の一種であり、会社の開業が遅れた際に株主の利益を補うための制度でした。
本記事では、建設利息の仕組みや目的、そして現在ではなぜ廃止されたのかをわかりやすく解説します。
建設利息とは
建設利息とは、商法上において認められていた繰延資産の一つで、会社設立から2年以上が経過しても営業活動の全部を開始できない場合に、定款の規定に基づいて開業前の株主に支払う利息を指します。
会社の事業開始が遅れると、出資した株主にとって資金が長期間拘束されることになります。その不利益を軽減するために、株主への補償として設けられたのが建設利息でした。
建設利息の目的と背景
この制度の主な目的は、株主の利益を保護し、資金調達を容易にすることにありました。
営業開始まで時間がかかる企業では、投資家が資金を出し渋る可能性があるため、利息を支払うことで出資意欲を高める狙いがあったのです。
しかし実際には、建設利息の支払いは「出資金の一部を事実上払い戻す行為」とみなされる場合が多く、企業の財務の健全性を損なう可能性があると指摘されていました。
建設利息の会計処理
商法上、建設利息は「繰延資産」として計上し、支出から5年以内に償却する必要がありました。
税務上は「任意償却」とされており、企業の判断で一括償却することも可能でした。
このように、建設利息は一時的に資産として扱われ、一定期間にわたって費用化するという会計処理が行われていたのです。
現在の取り扱いと廃止の理由
会社法改正により、建設利息はすでに廃止されています。
理由は、現代の企業制度では「株主保護」は配当や開示制度など、より透明性の高い方法で行われるようになったためです。
また、会社法では繰延資産の「限定列挙制度」がなくなり、企業が任意に計上できる形へと変化しています。
つまり、建設利息のように法律で定められた特殊な繰延資産は、もはや現行制度には存在しません。
まとめ
建設利息とは、会社の開業が遅れた際に株主へ利息を支払うために設けられた、旧商法時代の繰延資産制度です。
当初は株主保護の観点から導入されましたが、現在の会社法では不要とされ廃止されています。
会計や会社法の変遷を理解する上で、建設利息は「旧制度における株主保護の仕組み」を学ぶ良い例といえるでしょう。
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