建物を建てる際、土地所有者(賃貸人)が負担する建設資金は小さくありません。
その負担を軽減するために活用されるのが 建設協力金 です。
建設協力金は賃貸契約と深く関わっており、会計処理の判断を誤ると後々トラブルになる可能性があります。
この記事では、「建設協力金とは何か」「どのような仕組みなのか」「貸主・借主それぞれのメリット」「会計処理」まで、専門家として丁寧に解説します。
建設協力金とは?基本の考え方
建設協力金とは、賃貸人(建物を所有する側)が建物建設のための資金として、賃借人(借りる側)から受け取る資金のこと をいいます。
建設協力金は次のような特徴があります。
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建物の建設に必要な資金を賃借人が一部負担する
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賃貸借契約の前提条件として差し入れられる
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性質としては差入保証金に近いものの、会計上は原則「貸付金」扱い となる
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契約内容により返済方法が異なる
一般的には、商業施設・ロードサイド店舗・チェーン店など、ある程度長期の賃貸借契約を前提としたケースでよく利用されます。
建設協力金の返済方式:2つの代表的なパターン
建設協力金は「預かったら返すだけ」ではなく、契約に応じて返済方法が変わります。
主な方式は次の2つです。
① リースバック方式(賃料と相殺する方式)
もっとも一般的な方法が、毎月の賃料の中から建設協力金を徐々に償却していく方式 です。
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賃料の一部を「建設協力金の返済」として扱う
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契約期間内に全額償却されることが多い
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実質的には「賃借人が建設費を一部負担し、賃貸料で返済する」仕組み
長期契約を前提とした、飲食チェーン・ドラッグストアなどでよく採用されます。
② 据置期間後に一括返済する方式
もう一つは、10~15年程度据え置いた後に一括返済する方式 です。
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長期間返済を行わず、据置期間終了後にまとめて返す
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利息相当額を付けて返済するケースが多い
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「借入金に近い性質」を持つため、契約条件に注意が必要
土地所有者の資金負担を大きく軽減できますが、返済のタイミングや金利条件をめぐってトラブルになることもあるため、契約書を明確にしておく必要があります。
建設協力金を採用する賃貸人側のメリット
建設協力金方式には、賃貸人(建物を所有する側)にとって多くのメリットがあります。
1. テナントを確保した上で建物を建設できる
「建物を建てても入居者が見つからない」というリスクがほぼゼロになります。
2. 保証金負担に金利がかからない
通常の保証金と異なり、利息を支払う必要がありません。
3. 賃借人の中途解約時に返済義務がない
償却型であれば、途中解約されても返済義務がなく、賃貸人にとって安全性が高い制度です。
4. 相続税対策になる
建設協力金は「債務」として扱われるため、土地の評価額を圧縮し、相続税の軽減につながる ケースがあります。
建設協力金の会計処理(賃貸人・賃借人の扱い)
建設協力金は性質が少し複雑で、契約内容で処理が変わることもあります。
ここでは「原則的な扱い」を説明します。
■ 賃借人側(お金を提供する側)
貸付金として資産計上するのが原則
リースバック方式の場合は、月々の賃料の中で返済分を、
と償却します。
■ 賃貸人側(建設協力金を受け取る側)
受け取った建設協力金は「長期の預り金」または「長期負債」として計上
返済を伴うため、収益には計上しません。
償却型であれば、返済相当分を以下のように月次処理します。
※ 契約書に基づき処理が異なるため、必ず内容を確認することが重要です。
建設協力金は節税・資金繰りに役立つが、契約内容の把握が必須
建設協力金は、賃貸人にとって資金負担や空室リスクを抑えられる便利な制度です。
一方で、契約方式によっては「借入金に近い性質」を持つこともあり、返済条件や税務上の扱いに注意する必要があります。
特にポイントとなるのは次の3点です。
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返済方式(償却型か、一括返済か)
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利息扱いに該当するかどうか
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会計処理を双方が正しく行えているか
建設協力金は大きな金額になりやすいため、契約前に専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ:建設協力金は「賃貸人の建設資金を賃借人が支援する仕組み」
建設協力金とは、
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建設資金として賃借人が差し入れるお金
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差入保証金に似ているが、会計上は貸付金扱い
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賃料と相殺して償却する方式が一般的
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賃貸人には建設リスクの軽減・相続税対策などのメリットがある
という特徴を持つ制度です。
建設・賃貸ビジネスでは広く利用されている仕組みのため、基本を押さえておくことで契約交渉や税務対応がスムーズになります。
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