企業経営において「役員報酬」は重要なテーマです。
この記事では、取締役や監査役などの役員に支払われる報酬の基本から、給与との違い、決め方や相場、損金算入のポイントまでをわかりやすく解説します。
初心者でも理解できる内容にまとめていますので、経営者や人事担当者はぜひ参考にしてください。
役員報酬とは
役員報酬とは、取締役・監査役・会計参与など会社の役員に支払われる報酬のことです。従業員に支払う「給与」とは性質が異なり、以下の特徴があります。
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株主総会で金額が決定される
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支払額は原則として一定で変更できない
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会社法や法人税法に基づき厳格にルールが定められている
つまり、役員報酬は「会社の意思決定に関わる報酬」であり、従業員の給与とは区別されます。給与は雇用契約に基づき支払われるものですが、役員報酬は雇用契約の有無に関わらず支払われる報酬です。
役員とその種類
役員には会社法で定められた複数の役職があります。
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取締役:会社の業務執行の意思決定を行う。代表取締役は会社を代表して意思決定。
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執行役:指名委員会等設置会社で取締役会の方針に基づき業務を実行する。
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監査役:取締役や会計参与の業務執行を監査。不正や違法行為を報告。
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会計参与:財務諸表作成に関与。税理士や公認会計士など専門資格が必要。
役員報酬の決め方
1. 株主総会で総額を決定
役員報酬の総額は、会社設立日または事業年度開始日から3か月以内に株主総会で決定します。過半数の賛成で可決されます。
2. 取締役会で個別報酬を決定
総額が決まった後、取締役会で各役員の報酬を個別に決定します。議事録の作成も必要です。
3. 決定時の注意点
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決定した報酬額は原則、年度内に変更不可
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同業種・同規模企業とのバランスを意識
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会社の利益や社会保険料、法人税との兼ね合いを考慮
役員報酬の相場
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、資本金別の役員報酬相場は以下の通りです。
| 資本金 | 男性役員 | 女性役員 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 2,000万未満 | 674万円 | 372万円 | 582万円 |
| 2,000万以上 | 921万円 | 571万円 | 832万円 |
| 5,000万以上 | 1,158万円 | 490万円 | 1,086万円 |
| 1億円以上 | 1,326万円 | 760万円 | 1,279万円 |
| 10億円以上 | 1,799万円 | 521万円 | 1,598万円 |
同業種や同規模企業と比べて極端に高額にならないよう注意しましょう。
損金算入できる役員報酬の種類
税務上、役員報酬を損金に算入できるのは以下の3種類です。
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定期同額給与:毎月同じ額を支払う報酬。設立後3か月以内に決定。
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事前確定届出給与:役員賞与など、事前に税務署へ届出を行う報酬。
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業績連動給与:会社の利益に連動して決める報酬。非同族会社など一部企業のみ適用可能。
損金算入には「期限内決定」「変更不可」「不相当に高額でない」の3つの条件を守る必要があります。
役員報酬決定時の注意点
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法人税とのバランス:報酬が増えると法人税は減少するが、個人所得税は増加。
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社会保険料との兼ね合い:報酬が増えると会社負担・個人負担も増える。
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損益計画の調整:期首に資金計画を立て、期中の予想外の納税リスクを回避。
まとめ
役員報酬は単なる給与ではなく、会社経営や税務戦略に深く関わる重要な報酬です。決め方や相場を理解し、損金算入のルールを守ることで、適正な経営判断と節税対策につなげることができます。経営者や人事担当者は、他社事例や自社の利益状況を踏まえ、慎重に役員報酬を設定することが大切です。
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