企業の買収や再編で登場する「株式交換制度」。
名前だけではイメージしにくいですが、企業再編のスピード化や効率化に役立つ手法として、日本の会社法に定められています。
この記事では、株式交換制度の基本、手続きの流れ、税務上のポイントまで、初心者にもわかりやすく解説します。
株式交換制度とは?
株式交換制度とは、買収会社と被買収会社の株式を交換することで、被買収会社が完全子会社となる企業再編手法です。
具体的には次のような流れです。
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買収会社(親会社候補)が株式交換契約を締結
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被買収会社(子会社候補)の発行済株式をすべて取得
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被買収会社は完全子会社化
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被買収会社の株主には買収会社の株式や現金などを対価として交付
例:会社Aが会社Bを株式交換で子会社化する場合、会社Bの株主は会社Aの株式や現金を受け取り、会社Bは会社Aの完全子会社になります。
株式交換制度の会社法上の規定
株式交換制度は会社法に定められています。主な条文は以下の通りです。
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767条:株式交換契約の締結
株式会社は株式交換を行う場合、取得会社(株式交換完全親会社)と契約を締結する必要があります。 -
768条・769条:契約内容や効力の発生
株式交換契約の内容や効力発生日などが規定されています。 -
797条:反対株主の株式買取請求権
株式交換に反対する株主は、発行会社に対して株式を適正な価格で買い取るよう請求できます。
税制上、株式交換は売却にあたらないため、原則として課税対象になりません。
株式交換制度が生まれた背景
株式交換制度は、1999年の商法改正で導入され、その後会社法に引き継がれました。
背景には以下があります。
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国際化・グローバル競争に対応するため、日本企業の再編スピードを早める
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旧商法では、株式交換や合併の際、株式以外の対価(金銭・社債・他社株式)は原則不可だったが、会社法で柔軟化
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手続きの簡略化や特別決議制度により、少数株主の反対があっても迅速な再編が可能に
これにより、従来の買収方式に比べて、迅速かつ柔軟に企業統合を進められるようになりました。
株式交換制度の手続きと注意点
株式交換制度を実施するには、いくつかのステップと注意点があります。
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株式交換契約の締結
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取得会社と被取得会社が契約書を作成
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株主総会での特別決議
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議決権総数の過半数の出席、出席者の3分の2以上の賛成が必要
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効力発生と登記
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株式交換契約に基づき、効力が発生
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反対株主は株式買取請求権を行使可能
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対価の交付
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被取得会社の株主に株式・金銭・社債などを交付
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注意点として、株主総会の特別決議を得る必要があるため、株主の理解と調整も重要です。
株式交換制度のメリット
株式交換制度を活用することで、次のようなメリットがあります。
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迅速な企業再編が可能
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少数株主の反対があっても特別決議で対応可能
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対価の柔軟化(株式・金銭・社債など選択可能)
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税務上、売却に該当せず課税が発生しない場合がある
企業の成長戦略やグループ再編に非常に有効な手法です。
まとめ
株式交換制度は、会社法に基づく企業再編の手法で、被買収会社を完全子会社化する際に活用されます。
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株式交換契約と株主総会の特別決議が必要
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反対株主には株式買取請求権が付与される
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対価は株式・金銭・社債など柔軟に選択可能
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税務上、売却に該当せず課税対象にならないケースがある
企業統合や持株会社設立を考えている方は、株式交換制度のメリットと手続きを正しく理解することが重要です。
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