企業経営において「減資」という言葉を耳にすることがあります。
減資は、会社の資本金を減少させる手続きで、経営戦略や財務体質の改善に役立つ重要な手段です。
この記事では、減資の基本から有償減資・無償減資の違い、メリット・デメリットまでをわかりやすく解説します。
減資とは?
減資とは、簡単にいうと会社の資本金を減少させる手続きのことです。
会社は株主から集めた資金を運用して経済活動を行います。資本金はその運転資金の中心ですが、減資を行うことで資本金を帳簿上で減少させ、財務戦略や株主還元、節税などに活用します。
減資には大きく分けて2種類あります:
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有償減資:実際に資金が減少する減資
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無償減資:資金は減少せず、帳簿上のみ資本金が減少する減資
それぞれメリット・デメリットが異なるため、目的に応じて使い分けることが重要です。
有償減資とは?メリットとデメリット
有償減資の意味
有償減資は、株主に資金を払い戻すなど、実際に現金などの資産が減少する減資です。
主に「株主への財産還元」を目的として行われます。中小企業では節税目的で行われる場合もあります。
例
会社の現預金が10億円、負債4億円、資本金6億円の状況で、1億円を株主に払い戻す場合、有償減資により現預金と資本金がそれぞれ1億円減少し、残高は以下のようになります:
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現預金:9億円
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負債:4億円
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資本金(純資産):5億円
有償減資の会計処理
有償減資は、資本金の減少と資本剰余金を財源とした配当の2段階で処理されます。
仕訳例:
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借方:資本金 1,000,000円
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貸方:その他資本剰余金 1,000,000円
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借方:その他資本剰余金 1,000,000円
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貸方:未払配当金 1,000,000円
税務上は、場合によって「みなし配当」として扱われることがあります。
有償減資のメリット
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株主に配当を行える
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株主との良好な関係を維持できる
有償減資のデメリット
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会社の現金資産が減少する
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将来の投資余力や経営の柔軟性が低下する可能性
無償減資とは?メリットとデメリット
無償減資の意味
無償減資は、資本金を減少させるものの資金は減少しない減資です。
主に「欠損の補填による経営立て直し」や「節税」を目的として行われます。
例
現預金10億円、負債4億円、資本金7億円、欠損金1億円の場合、欠損金補填のため1億円を減資すると、現預金はそのまま、資本金と欠損金が1億円減少します:
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現預金:10億円
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負債:4億円
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資本金(純資産):6億円
無償減資の会計処理
無償減資は、純資産内での振替処理が中心です。欠損金補填がある場合は、資本金を資本剰余金に振り替えた後、利益剰余金に補填します。
仕訳例(欠損補填あり):
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借方:資本金 1,000,000円
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貸方:その他資本剰余金 1,000,000円
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借方:その他資本剰余金 1,000,000円
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貸方:繰越利益剰余金 1,000,000円
無償減資のメリット
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欠損金を補填して財務体質を改善できる
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資本金1億円以下にして税制上の優遇を受けられる(節税効果)
無償減資のデメリット
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資本金減少により信用力が低下するおそれ
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取引先や金融機関からの評価が下がる可能性
減資を検討する際のポイント
減資は会社にとってメリットも多いですが、信用力低下などのデメリットもあります。
株主還元や財務改善、節税などの目的を明確にし、メリットとデメリットを十分に理解した上で判断することが重要です。
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