会計や金融の現場で頻繁に登場する「直接償却」。
不良債権処理やオフバランス化と深く結びつく重要な概念ですが、専門用語が多く理解しづらいと感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、直接償却とは何か、間接償却との違い、どのようなケースで使われるのかを、実務経験者の立場からわかりやすく整理して解説します。
直接償却とは?
直接償却とは、金融機関などの債権者が、回収不能となった債権を貸借対照表から直接切り離し、損失として処理する方法です。
帳簿から完全に消すことで、その債権は企業の資産として残りません。この処理は一般に「オフバランス化」と呼ばれます。
直接償却が行われる典型的なケース
-
債務者の法的倒産
-
債権の放棄(私的整理)
-
債権売却による処理
いずれも「債権をこれ以上回収できない」状況に対して行われる最終的な債権償却の手段です。
直接償却と間接償却の違い
直接償却と混同されやすいのが 間接償却(貸倒引当金による処理) です。
両者は債権の扱いが大きく異なります。
● 間接償却とは
間接償却は、回収不能になる恐れがある不良債権の見積額を「貸倒引当金」として計上し、事前に費用化しておく方法です。
-
債権そのものは貸借対照表に残る
-
予測に基づく引当処理
● 直接償却とは
一方で直接償却は、
-
不良債権を直接オフバランス化
-
帳簿上から資産そのものを消去
-
実際に損失が確定した場合に行う
● どちらが企業に有利?
会計上、不良債権が帳簿に残り続けると企業評価に影響します。
そのため、企業価値や財務指標の改善を目的に、直接償却のほうが有利と考えられるケースも多いと言えます。
直接償却の具体的な方法
直接償却は以下の3つの方法で行われます。それぞれの特徴を確認しておきましょう。
① 私的整理(債権放棄)
債権者が自らの判断で債権を放棄し、無償で消滅させる方法です。
注意点:
債権が「回収不能」であることを証明しなければ、放棄した金額は損金算入できません。
そのため、債務者の財務状況・督促履歴・破産状況などの 証拠資料を保存しておくことが必須 です。
② 法的整理(倒産手続)
裁判所の監督下で行う正式な倒産手続で、以下に分かれます。
-
再建型: 民事再生、会社更生
-
清算型: 破産、特別清算
債権の大幅なカットや消滅が法的に確定するため、直接償却の根拠として確実性が高い手続です。
③ 債権売却
不良債権を「整理回収機構(RCC)」などの第三者に売却する方法です。
売却価格との差額が損失となり、結果的に直接償却と同様の効果が得られます。
直接償却が企業にもたらすメリット
直接償却は「最後の手段」と思われがちですが、実務では重要な経営判断にもつながります。
● 1. 貸借対照表が健全化する
不良債権が帳簿から除外されるため、財務状況がより正確に反映されます。
● 2. 外部評価の改善
不良債権が減ることで、金融機関や投資家からの企業評価が上がりやすくなります。
● 3. 経営判断がしやすくなる
回収不能債権をいつまでも保有している状態を避け、本質的な事業リソースに集中できます。
まとめ:直接償却とは “不良債権を確定的に処理する方法”
直接償却は、不良債権を帳簿から直接消去する重要な会計処理です。
間接償却と比べて、企業の財務状況を健全に保ち、評価を高める効果を持つ場合があります。
ポイントのおさらい
-
直接償却は不良債権をオフバランス化する処理
-
間接償却(貸倒引当金)との違いは「債権の残り方」
-
方法は「私的整理」「法的整理」「債権売却」
-
企業価値の改善にもつながる
こちらもご覧ください

