企業の財務分析や決算書を見る際に、「経常損失(けいじょうそんしつ)」という言葉を目にすることがあります。
経常損失とは、簡単に言えば「本業やその周辺の活動で継続的に赤字が出ている状態」のことです。
この記事では、経常損失の意味・計算方法・原因分析のポイントを、会計の専門家の視点から初心者にもわかりやすく解説します。
🔹 経常損失とは?
「経常損失(けいじょうそんしつ)」とは、企業の経常損益がマイナスになっている状態を指します。
経常損益とは、企業の通常の事業活動によって生じる継続的な利益または損失のことです。
したがって、経常損失は「企業の経常的な活動で赤字が出ている」ことを意味します。
🔹 経常損失の計算方法
経常損失は、損益計算書(PL:Profit and Loss statement)の次の式で求められます。
経常損益 = 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用
この式で経常損益がマイナスになった場合、その金額が経常損失です。
たとえば、以下のようなケースを考えてみましょう。
| 項目 | 金額(万円) |
|---|---|
| 営業利益 | 100 |
| 営業外収益(受取利息など) | 10 |
| 営業外費用(支払利息など) | 150 |
この場合、
100 + 10 − 150 = −40(経常損失40万円)
となります。
🔹 経常損失が意味するもの
経常損失が発生しているということは、企業の通常の活動が赤字であることを示します。
つまり、単発的な特別損失ではなく、本業やその周辺の経営に構造的な問題がある可能性を意味します。
ただし、「経常損失=即倒産」ではありません。
一時的な投資や外部環境の変化により経常損失になることもあり、継続的に赤字が続いているかどうかを時系列で確認することが重要です。
🔹 経常損失の原因と分析のポイント
経常損失が出た場合、単に「赤字になった」と判断するのではなく、原因を分析することが大切です。
主な要因は以下のとおりです。
| 区分 | 主な原因 |
|---|---|
| 営業活動 | 売上の減少・コスト増加・販売不振など |
| 営業外活動 | 借入金の利息負担・為替差損・投資損失など |
| 経営環境 | 景気後退・取引先の減少・市場競争の激化など |
✅ 分析のポイント
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過去数年の損益を時系列で比較する
一年だけの数値で判断せず、過去3〜5年の推移を確認します。
継続的に赤字が続いている場合は構造的な問題の可能性が高いです。 -
営業利益との関係を見る
営業利益が黒字でも、営業外費用が多ければ経常損失になります。
たとえば、借入金が多い企業では支払利息が経常損失の要因となるケースがあります。 -
キャッシュフローも確認する
損益計算書で赤字でも、減価償却費などの非現金支出が多い場合は、実際の資金繰りがプラス(黒字)になることもあります。
そのため、「経常損失=資金不足」とは限りません。
🔹 経常損失を改善するための対策
経常損失が続く場合、企業は次のような経営改善策を検討する必要があります。
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コスト削減や不採算事業の縮小
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収益性の高い新規事業の導入
-
借入金の見直し・利息負担の軽減
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財務体質の改善(自己資本の増強)
また、経営者は経常損失の原因を明確にした上で、中期経営計画を策定し、継続企業の前提を維持できるようにすることが求められます。
🔹 まとめ:経常損失は「企業の健康診断結果」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 用語 | 経常損失(けいじょうそんしつ) |
| 意味 | 経常損益がマイナスの状態(企業の通常活動で赤字) |
| 原因 | 売上減少、コスト増加、利息負担など |
| 分析方法 | 過去データの比較・キャッシュフロー分析 |
| 改善策 | 経営構造改革・費用削減・収益強化 |
経常損失は企業の「体温計」のような存在です。
単年の数字に一喜一憂するのではなく、長期的な視点で経営の健全性をチェックすることが大切です。
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