企業間取引では、現金の代わりに手形(約束手形や為替手形)が利用されることがあります。その中でもよく登場するのが「裏書手形(裏書譲渡手形)」です。
「裏書ってなに?」「手形を受け取ったあと、第三者に渡すことはできるの?」と疑問を持つ方も多いでしょう。この記事では、裏書手形の仕組み・リスク・会計処理方法を会計の専門家としてわかりやすく解説します。
裏書手形とは?
裏書手形とは、受け取った手形を第三者へ譲渡する際に、手形の裏面に署名や押印をして権利を移転させた手形のことです。
裏書をすることで、手形は「裏書譲渡手形」として流通し、債務の支払い手段として使えるようになります。
ポイント
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裏書手形は、現金化される期日を待たずに資金や債務支払いに活用できる
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手形の裏面に「譲渡人の氏名・住所」を記入し、捺印すること(裏書)で効力が生じる
つまり、手形を単なる「受け取り証明」に留めず、資産として再利用する仕組みといえるのです。
裏書手形の具体例
例えば、以下のようなケースが考えられます。
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A社がB社から商品代金として「約束手形」を受け取る
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A社はC社への支払い期日が迫っている
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A社はB社から受け取った手形を裏書してC社に渡す
この場合、C社はB社(手形の振出人)に対して支払いを請求できるようになり、A社は現金を用意せずに債務を履行できることになります。
裏書手形の注意点(リスク)
裏書手形にはメリットもありますが、注意すべきリスクも存在します。
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❌ 連帯保証の義務がある
裏書をした人(裏書人)は、手形が決済されなかった場合に支払い義務を負います。つまり、不渡りになると裏書人に遡って請求される可能性があります。 -
❌ 信用リスクの存在
取引先が信頼できない場合、裏書手形を受け取ることで自社に債務リスクが移ってくることもあります。
そのため、裏書手形を利用する際は、振出人の信用力や資金繰りを十分に確認することが重要です。
会計処理における裏書手形
企業会計上、裏書手形は単純な売上や利益ではなく、偶発債務を伴う項目として扱われます。
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貸借対照表上の表示:流動負債に計上されることが多い
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理由:裏書した手形が不渡りとなった場合、裏書人に支払義務が発生する可能性があるため
つまり、裏書手形は「確定した収益」ではなく、潜在的な債務(保証責任付きの支払手段)として処理されるのです。
裏書手形のまとめ
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裏書手形とは、受け取った手形を裏書きして第三者に譲渡する手形のこと
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資金繰りや支払い手段として有効に活用できる
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ただし、不渡りになった場合は裏書人にも支払い義務が生じるため注意が必要
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会計処理上は「流動負債」として扱われ、偶発債務の可能性を反映する
裏書手形は資金繰りを柔軟にする有効な手段ですが、信用リスクと会計処理の正確性を常に意識して活用することが重要です。
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