企業の経理業務では、「買掛金」「未払金」「未払費用」など、似たような負債科目が多く登場します。
特に買掛金は、日常的に発生する取引の中で最も頻繁に登場する勘定科目のひとつです。
この記事では、買掛金の基本的な意味から、未払金や売掛金との違い、仕訳例や管理のポイントまでをわかりやすく解説します。
買掛金とは?
買掛金(かいかけきん) とは、商品や原材料を「掛け取引」で仕入れた際に、後日支払う代金を記録するための負債科目です。
たとえば、取引先から50万円分の商品を掛けで仕入れた場合、「仕入/買掛金」と仕訳します。
買掛金は通常、貸借対照表の流動負債として計上されます。これは、1年以内に支払う義務がある短期的な債務であるためです。
掛け取引を活用すれば、手元資金を効率的に運用できる反面、支払い管理が不十分だとトラブルにもつながります。
未払金との違い
買掛金と混同されやすいのが「未払金」です。
どちらも「後日支払う債務」ですが、発生の原因となる取引の種類が異なります。
| 項目 | 買掛金 | 未払金 |
|---|---|---|
| 主な内容 | 商品・原材料の仕入に関する未払い | 固定資産・備品など仕入以外の未払い |
| 例 | 商品を掛けで仕入れた | パソコンを後払いで購入した |
| 会計区分 | 仕入債務 | その他の債務 |
つまり、仕入に関係するのが買掛金、仕入以外の支払いが未払金です。
未払費用との違い
未払費用は、決算時点で発生済みだがまだ支払っていない費用を計上するための科目です。
典型的な例は「水道光熱費」や「通信費」などの継続的な契約です。
たとえば、3月末が決算日で、電気料金が翌月に請求される場合は、当期分を未払費用として計上します。
これは「発生主義」に基づき、実際の支払いタイミングではなく発生した時点で費用を認識するためです。
売掛金との違い
売掛金は、企業が商品やサービスを販売した際に、代金を後日受け取る権利を記録する科目です。
つまり、買掛金が「支払う義務」であるのに対し、売掛金は「受け取る権利」という関係になります。
両者はちょうど表裏の関係にあり、どちらも企業間の掛け取引で頻繁に発生します。
経理担当者は、取引先ごとの残高が一致しているかを定期的に確認する必要があります。
買掛金の仕訳例
| 取引内容 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 商品を掛けで仕入れた | 仕入 500,000 | 買掛金 500,000 |
| 掛仕入分を当座預金で支払った | 買掛金 500,000 | 当座預金 500,000 |
| 商品を返品した | 買掛金 20,000 | 仕入 20,000 |
| 買掛金を支払手形で支払った | 買掛金 500,000 | 支払手形 500,000 |
| 同一取引先の売掛金と相殺した | 買掛金 250,000 | 売掛金 250,000 |
これらの処理を正確に行うことが、決算時の整合性維持や監査対応の基本になります。
買掛金の残高確認と管理のポイント
買掛金は、決算時だけでなく月次決算や四半期ごとにも残高を確認することが望ましいです。
主な確認方法は「買掛金元帳」を使うことです。
これは、取引先ごとの残高や取引明細を記録する帳簿で、支払い漏れや誤仕訳の発見に役立ちます。
残高が一致しない場合、次のような原因が考えられます。
-
計上漏れ(検収漏れや仕訳忘れ)
-
金額の計算ミス
-
支払手数料などの処理ミス
特に検収漏れは、発生時期のずれによって決算数値を誤らせるため、注意が必要です。
まとめ
買掛金は企業会計の中でも基本的かつ重要な科目です。
未払金・未払費用・売掛金など、似た勘定科目と正しく区別することが、正確な決算書作成の第一歩となります。
また、取引先ごとの残高管理や定期的な照合を行うことで、会計の信頼性とスムーズな資金管理を実現できます。
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