企業が従業員に支払う退職金や退職年金は、将来の支払であっても「その従業員が働いた期間」に応じて費用として計上することが求められます。
ここで重要になるのが 退職給付費用(たいしょくきゅうふひよう) です。
この記事では、退職給付費用の意味、構成要素、会計処理のポイントを、初めて学ぶ人にもわかりやすく整理して解説します。
退職給付費用とは?P/Lに計上する退職給付の当期分費用
退職給付費用とは、退職給付会計基準にもとづき、退職金や退職年金に関する費用として損益計算書(P/L)に計上する金額のことです。
もっとシンプルに言うと、
企業が将来支払うであろう退職金のうち
「今年分として発生した費用」
を人件費として計上したものです。
退職給付費用は多くの企業で営業費用に含まれ、従業員への報酬の一部として扱われます。
退職給付費用の構成要素は4つ
退職給付費用はいくつかの要素から成り立っています。
主な内訳は次の通り。
・勤務費用
・利息費用
・期待運用収益(マイナス要素)
・未認識債務償却費用
これらはそれぞれ発生の仕組みが異なります。
勤務費用:働いた期間に応じて発生する費用
従業員が1年間働いたことにより発生する退職給付債務の増加分です。
退職給付費用の中でも最も基本となる部分で、毎期必ず発生します。
利息費用:退職給付債務が時間とともに増える部分
退職給付債務は「将来支払う金額の現在価値」なので、時間の経過とともに割引計算の影響で増加します。
この増加分を利息費用と呼びます。
期待運用収益:年金資産が運用されて増える見込み(費用から控除)
企業が年金資産を運用している場合、その資産が将来増える見込み分を「期待運用収益」として費用から差し引きます。
実際の運用差益とは別に、あくまで「期待値」として計上される点がポイント。
未認識債務償却費用:過去の未認識部分を分割して計上
過去における制度改正や数理計算の変更で発生した未認識債務を、一定期間にわたり償却する費用です。
退職給付費用の中ではやや特殊な位置づけですが、制度変更があった企業では重要になります。
退職給付費用はP/Lで区分せずまとめて計上する
上で紹介したように、退職給付費用は複数の要素で構成されていますが、損益計算書上は個別に区別して表示する必要はありません。
「退職給付費用」としてひとつの科目で計上され、人件費として扱われるのが一般的です。
臨時の退職金などは支払時に費用処理する
通常の見積もりにもとづく退職給付費用とは別に、次のようなケースでは特別な処理になります。
・臨時の退職金として事前に予測できなかった支給が発生した
・退職給付引当金の金額を超える退職給付を支給した
この場合、支払時点でそのまま退職給付費用として処理します。
突発的に発生する退職金は見積もり計算に含められないため、別扱いになるわけです。
まとめ
退職給付費用は、将来支払う退職金のうち「当期に帰属する部分」を計上する重要な費用です。
・勤務費用
・利息費用
・期待運用収益
・未認識債務償却費用
といった複数の要素で構成されますが、P/Lでは「退職給付費用」としてまとめて表示されます。
さらに参照してください:

