企業の取引で用いられる約束手形や為替手形には、「遡及義務」という独特の制度があります。
この記事では、遡及義務の仕組みや会計上の扱い、裏書人の責任について初心者にもわかりやすく解説します。
1. 遡及義務の基本的な意味
遡及義務とは、手形が不渡りとなった場合に、裏書人や割引人まで支払い義務が及ぶ制度のことです。
手形は自由に譲渡できる債権であるため、現金化される前に何度も取引されることがあります。しかし、手形の価値は振出人への信用に基づいて成立しているため、譲渡者にも責任が課される仕組みとなっています。
2. 裏書と遡及義務の関係
手形を譲渡する際には、手形の裏面に氏名や住所を記入する「裏書」を行う必要があります。
これは単なる形式ではなく、譲渡者が手形の信用に責任を持つことを意味しています。
そのため、手形が期日までに決済されず不渡りになった場合、裏書人も支払い責任を負うことになります。
言い換えれば、裏書人は「手形の信用に加担した者」と見なされるため、支払い義務が順次遡及(さかのぼって)していくのです。
3. 遡及義務の具体例
例えば、A社がB社に手形を渡し、その後B社がC社に裏書した場合を考えます。
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期日に手形が不渡りになった場合
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C社はまずB社に支払いを請求
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B社が支払えない場合、支払い義務がA社に遡及
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このように、手形の価値と所有者が保護される仕組みになっています。
4. 会計上の取り扱い
企業会計においては、裏書手形は流動負債の部に計上されます。
これは、手形が不渡りになる可能性があるため、偶発債務として扱われるためです。
なお、遡及義務によって支払いが生じる場合、裏書人の支払義務も負債として認識されます。
5. まとめ
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遡及義務とは、手形不渡り時に裏書人や割引人に支払い義務が及ぶ制度
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手形の譲渡には裏書が必須で、譲渡者の責任を明確化
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不渡り時には支払いが順次裏書人に遡及され、手形の信用が保護される
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会計上は、裏書手形は流動負債として処理される
遡及義務を理解することで、約束手形や為替手形の仕組みだけでなく、手形取引に伴うリスク管理や会計処理の考え方もより正確に把握できます。
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