事業を始めるときに意外と悩むのが「開業準備中に使ったお金はどう処理すればいいの?」という点です。
実はその費用、多くの場合 「開業費」 として計上できます。
この記事では、会計の専門家が 開業費の定義・仕訳・法人との違い・具体例 をわかりやすく解説します。
🔹 開業費とは?
開業費(かいぎょうひ) とは、事業を始めるまでにかかった準備費用を処理するための勘定科目です。
つまり、「営業を始めるための準備に使ったお金」を後から費用として計上するためのものです。
ただし、個人事業主と法人(会社)では扱い方が異なります。
🧾 個人事業主の開業費:範囲が広く柔軟!
個人事業主の場合は、開業準備のために支出したすべての費用を「開業費」としてまとめて計上できます。
たとえば、以下のような支出はすべて対象になります。
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開業前に借りたオフィスの家賃
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名刺や印鑑の作成費用
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広告・チラシなどの宣伝費
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パソコンや備品の購入費
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開業前の調査費用や許認可申請費用 など
ポイントは、「開業前年度に支出した費用」も開業費として認められる ということです。
つまり、前年に使った準備資金も後で一括して計上可能です。
👉 仕訳の例:
その後、事業が始まってから少しずつ「償却」して経費に落とすことができます。
(もちろん、一括で経費にすることも可能です)
🏢 法人の開業費:創立費との違いに注意!
一方、法人(会社)の場合は少しルールが異なります。
法人では、会社設立以前の費用 は「創立費」という別の勘定科目で処理します。
したがって、「開業費」に含められるのは 設立から営業開始までの出費 に限られます。
❌ 開業費に含まれないもの(経常的な費用)
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オフィスや店舗の家賃
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電気・ガス・水道などの光熱費
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通信費
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従業員の給与
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事務用品や消耗品費
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保険料 など
これらは開業準備に特別関係がなく、通常の経費として処理する必要があります。
✅ 開業費に含まれるもの(特別な出費)
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印鑑・名刺・パンフレットなどの作成費
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開業広告・宣伝費
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市場調査費
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許認可の取得費用
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オープンイベント開催費 など
💡 開業費は資産として計上し、後で費用にできる!
開業費は「繰延資産(くりのべしさん)」という資産の一種です。
一度に経費にしなくても、後から任意のタイミングで償却して費用に落とすことができる のが特徴です。
例えば、開業時に300,000円の開業費を計上した場合:
そして、翌年度に半分を経費にしたい場合:
このように、状況に応じて柔軟に調整できます。
📚 まとめ:開業費を正しく処理して賢く節税!
区分 | 個人事業主 | 法人 |
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対象期間 | 開業前すべて | 設立後〜営業開始まで |
類似勘定 | ― | 創立費 |
開業費に含まれない | 経常的費用(家賃・光熱費など) | 経常的費用(同上) |
償却方法 | 任意(全額経費化も可能) | 任意(繰延資産として償却) |
さらに参照してください: