経理や会計を学び始めた方の中には、
「預り金ってどんなお金?」
「仕訳はどうすればいいの?」
と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、預り金の基本から仕訳方法、似ている勘定科目との違いまでを、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。
最後には「預り金の管理でよくあるミス」や「納付漏れを防ぐポイント」も紹介します。
🔹 預り金とは?
預り金(あずかりきん)とは、従業員・取引先・顧客などが負担すべきお金を、会社が一時的に預かっている状態を表す勘定科目です。
たとえば、給与から天引きした「源泉所得税」や「社会保険料」などが典型的な例です。
👉 預り金は会社のお金ではなく、一時的に保管しているだけというのがポイント。
そのため、貸借対照表上は「負債」として処理します。
🔹 預り金と似た勘定科目との違い
預り金と混同されやすいのが「立替金」や「前受金」です。
それぞれの違いを下記の表で整理してみましょう。
勘定科目 | 意味 | お金を出したのは誰? | 将来の売上になる? |
---|---|---|---|
預り金 | 他人から預かったお金 | 本人 | ❌ ならない |
立替金 | 他人のために一時的に支払ったお金 | 会社 | ❌ ならない |
前受金 | 将来提供する商品・サービスの代金を先に受け取ったお金 | 顧客 | ✅ なる |
このように、預り金はあくまで「一時預かり」であり、将来の売上や収益にはなりません。
🔹 預り金の仕訳例(具体例で解説)
① 給与支払い時の仕訳
給与を支払う際に源泉所得税を天引きする場合:
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
給与 | 600,000円 | 現金 | 500,000円 | 給与支給分 |
預り金 | 100,000円 | 源泉所得税・社会保険料等 |
💡従業員に渡した給与は50万円ですが、差し引いた10万円は「預り金」として会社が一時的に管理します。
② 預かった税金を納付したとき
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
預り金 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 | 源泉所得税納付 |
この時点で、預かっていたお金(負債)が消えるため、預り金勘定はゼロになります。
③ 社員からセミナー受講料を預かった場合
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
現金 | 10,000円 | 預り金 | 10,000円 | セミナー受講料(社員負担分) |
割引が適用され9,000円のみ支払った場合:
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
預り金 | 10,000円 | 現金 | 9,000円 | 受講料支払 |
現金 | 1,000円 | 社員へ返金 |
🔹 預り金は負債になる理由
預り金は「他人から預かったお金」であるため、返す義務がある=負債として計上します。
原則として1年以内に返済や納付が完了するため、「流動負債」に分類されます。
ただし、敷金・保証金などのように長期間返さないものは「固定負債」として処理します。
🔹 預り金がマイナスになるケース
通常、預り金はプラス残高(=会社が預かっている状態)ですが、次のような場合にはマイナスになることもあります。
-
年末調整で、返金額が天引き額を上回ったとき
-
労働保険料の「概算・確定」で過不足が生じたとき
一時的にマイナス表示される場合は、「立替金」などへ振り替えることで決算書を見やすく整理できます。
🔹 預り金の納付期限と注意点
代表的な預り金である源泉所得税や住民税には、納付期限が定められています。
項目 | 納付期限 |
---|---|
源泉所得税 | 翌月10日(小規模事業者は半年ごとにまとめ納付も可) |
健康保険・厚生年金保険料 | 翌月末日まで |
住民税 | 翌月10日まで |
期限を過ぎると「不納付加算税」や「延滞税」が課される場合があります。
納付漏れを防ぐために、会計ソフトやカレンダーでリマインド設定をしておくと安心です。
🔹 預り金の証明には「預かり証」が便利
現金や資料を預かった際には、現金預かり証(領収書)を発行して証拠を残しましょう。
テンプレートを使えばすぐに実務で利用できます。
(例:Excelフォーマットで「預かり証テンプレート」を作成)
🔹 預り金管理で失敗しないコツ
-
補助科目(例:「預り源泉税」「社会保険料預り金」)を設定する
-
月次で預り金勘定を照合する
-
納付期限を必ずスケジュール管理する
💡預り金の漏れや納付遅延は、税務上の指摘を受けるリスクがあります。
「仕訳は合っているか」「納付は済んでいるか」を定期的に確認しましょう。
✅ まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
預り金とは | 他人から一時的に預かったお金 |
会計上の区分 | 負債(流動負債) |
主な例 | 源泉所得税・社会保険料・敷金など |
収益になる? | ならない |
注意点 | 納付期限の管理・マイナス残高の処理 |
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