企業の財務諸表を見ていると、「その他利益剰余金」という項目を目にすることがあります。
一見難しそうな言葉ですが、実は企業がこれまでの事業活動で稼いだ利益をどのように蓄積・活用しているかを示す重要な指標の一つです。
この記事では、「その他利益剰余金」の意味や内訳、会計処理上のポイントを、初心者にもわかりやすく解説します。
その他利益剰余金とは?
その他利益剰余金とは、企業の利益のうち、法定の積立金である「利益準備金」を除いた残りの剰余金を指します。
これは貸借対照表(バランスシート)の純資産の部に記載される項目であり、自己資本の一部を構成します。
つまり、会社がこれまでの経営活動で得た利益のうち、株主への配当などで外部に支払われず、社内に留保された利益が「その他利益剰余金」として積み上げられていくのです。
利益剰余金の全体構成
利益剰余金は、会社法上次の2つに分かれます。
-
利益準備金(法律で積立が義務付けられている部分)
-
その他利益剰余金(企業が自主的に管理・運用できる部分)
このうち、「その他利益剰余金」はさらに2つの要素に分類されます。
その他利益剰余金の内訳
① 任意積立金
任意積立金とは、企業が将来のリスクや投資に備えて自主的に積み立てている利益のことです。
法律上の義務はありませんが、経営の安定化を図るために多くの企業が設けています。
例えば、次のような目的で設定されることがあります。
-
設備投資や研究開発への備え
-
景気悪化や不測の損失への対応
-
将来の大型プロジェクトへの準備資金
このように、任意積立金は「企業の防衛資金」としての性格を持ちます。
② 繰越利益剰余金
繰越利益剰余金とは、過去の決算で処理されずに繰り越された利益を指します。
前期の繰越利益に当期純利益を加算し、必要に応じて積立金を取り崩したり、配当を差し引いたりして算出されます。
具体的には次のような計算式になります。
決算後、株主総会などで承認を得てから、
・配当として株主に還元される
・利益準備金や任意積立金として社内に留保される
といった処理が行われます。
その他利益剰余金の重要性
その他利益剰余金は、単なる会計上の数字ではありません。
企業の利益蓄積の状況や財務体質の健全性を示す指標として非常に重要です。
例えば:
-
剰余金が多い → 経営が安定しており、将来の投資余力がある
-
剰余金が少ない → 利益が配当に回っており、内部留保が少ない
このため、投資家は企業分析の際に「その他利益剰余金」の推移を注視し、経営方針や資金運用の健全性を判断します。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 利益準備金を除いた企業内部の留保利益 |
| 分類 | 任意積立金・繰越利益剰余金 |
| 主な役割 | 企業の将来への備え、財務の安定化 |
| 会計上の位置 | 貸借対照表の「純資産の部」 |
さらに参照してください:

