保険を学んでいると「モラルリスク」という言葉を目にすることがあります。
これは 保険制度を不正に利用しようとする行為や、その可能性に伴う道徳的な危険 を指す言葉です。
一般的には「モラルハザード」と同じ意味で使われることが多く、保険制度を健全に維持するうえで重要な考え方です。
本記事では、モラルリスクの意味や具体例、保険会社の対策についてわかりやすく解説します。
モラルリスクとは?
モラルリスク(もらるりすく)とは、保険契約者や被保険者が 保険金や給付金を不正に得ようとする行為や、その動機が生じる状況 をいいます。
たとえば、以下のような行為はモラルリスクの典型例です。
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故意に事故を起こして保険金を請求する
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実際には治療が不要なのに医療費を水増し請求する
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保険金目当てで加入後すぐに自殺する
つまり、保険本来の「万一に備える」という目的を逸脱し、悪用する行為がモラルリスクです。
モラルハザードとの違い
「モラルリスク」と「モラルハザード」はほぼ同じ意味で使われます。
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モラルリスク:保険契約における不正利用や不正請求といった“道徳的な危険”を表す保険用語
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モラルハザード:経済学全般で使われる言葉で、「保険に入っているから安心して危険な行動をとる」といった行動の変化を指す
保険業界では両者を区別せず使うケースが多く、「モラルリスク=モラルハザード」と理解して問題ありません。
具体的な事例
1. 自殺免責
生命保険では「自殺免責」が代表的なモラルリスク対策です。
被保険者が保険加入直後に自殺してしまうと、保険金を目当てに契約したのではないかという問題が生じます。
そこで多くの保険会社は「加入から2〜3年間の自殺は保険金を支払わない」というルールを設けています。これにより、不正目的での加入を防止しています。
2. 医療費の水増し請求
入院や通院の実態がないのに医療費を請求するケースもモラルリスクの一例です。
保険会社は病院との照会や調査を行い、不正請求を防止しています。
3. 故意による事故
「車をわざとぶつけて修理費を請求する」など、故意に事故を起こす行為もモラルリスクに該当します。
保険会社のモラルリスク対策
モラルリスクを防ぐために、生命保険協会や損害保険業界ではさまざまな制度を導入しています。
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契約内容登録制度:過去の契約履歴を共有し、不自然な契約をチェック
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契約内容照会制度:保険金請求時に他社契約状況を確認できる仕組み
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支払査定時照会制度:不正な請求を防ぐため、業界全体で情報を確認
これらの仕組みによって、不正な保険金請求を未然に防ぎ、保険制度の健全性を保っています。
まとめ
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モラルリスクとは:保険金や給付金を不正に得ようとする“道徳的な危険”
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モラルハザードとの違い:実質的には同じ意味で使われる
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具体例:自殺免責、水増し請求、故意の事故
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対策:保険業界全体で制度を整え、不正防止を徹底
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