企業の決算書(特に貸借対照表)を作成する際、資産や負債を「流動」と「固定」に分けることは非常に重要です。
この区分を判断するルールのひとつが、今回解説する 「一年基準(ワン・イヤー・ルール)」 です。
この記事では、一年基準の意味や使い方、そして「正常営業循環基準」との違いを、初心者にもわかりやすく解説します。
🔹 一年基準とは(ワン・イヤー・ルール)
一年基準とは、企業会計において資産や負債を「流動」か「固定」かに分類するための判断基準の一つです。
英語では “One Year Rule” とも呼ばれます。
基本的な考え方は次の通りです。
🔸 決算日の翌日から起算して1年以内に現金化・支払いが行われるもの → 流動資産・流動負債
🔸 1年を超えて現金化・支払いが行われるもの → 固定資産・固定負債
つまり、「1年以内に動くかどうか」が判断のポイントになります。
🔹 一年基準の適用対象となる主な項目
一年基準が使われるのは、次のような期限のある取引や資産・負債です。
区分 | 主な項目 | 区分の目安 |
---|---|---|
資産 | 貸付金、差入保証金、定期預金、未収金など | 1年以内に回収できるなら「流動資産」、1年超なら「固定資産」 |
負債 | 借入金、受入保証金、未払金など | 1年以内に支払うなら「流動負債」、1年超なら「固定負債」 |
📘 例:借入金の場合
-
返済期限が決算日から6か月後 → 流動負債
-
返済期限が2年後 → 固定負債
このように、期限の長さによって会計上の区分が決まります。
🔹 一年基準と正常営業循環基準の関係
実際に貸借対照表を作成する際は、いきなり一年基準を適用するのではなく、まずはもう一つの基準である正常営業循環基準を先に使います。
🔸 正常営業循環基準とは?
「正常営業循環基準」とは、企業が通常行っている営業サイクル(仕入→販売→代金回収など)の中で発生する資産・負債を「流動」に分類するという考え方です。
つまり、たとえ1年以上かかっても、営業活動の一環で回収・支払いが行われるなら「流動」に含まれます。
🔸 適用の順序
実務上は次のように判断します:
-
まず「正常営業循環基準」で流動か固定かを判断
-
その基準に当てはまらないものについて「一年基準」を適用
この順序を守ることで、会計処理の整合性が保たれます。
🔹 一年基準の例外に注意
一年基準には、いくつかの例外があります。代表的なのは次の2つです。
項目 | 区分 | 理由 |
---|---|---|
棚卸資産(商品・製品など) | 流動資産 | 営業循環の中で販売されるため、1年を超えても流動に分類 |
固定資産(建物・機械など) | 固定資産 | 性質上、短期で現金化されるものではないため、1年以内でも固定に分類 |
🔹 一年基準を理解するメリット
一年基準を正しく理解しておくと、次のようなメリットがあります。
-
📊 貸借対照表の正確性が高まる
→ 資産や負債の性質を正しく分類できる -
💰 資金繰りの予測がしやすくなる
→ 1年以内に動く資金を把握できる -
🧾 税務申告や財務分析がスムーズになる
→ 流動比率・固定比率などの経営分析にも活用可能
🔹 まとめ:一年基準は「流動」と「固定」を見極めるための会計の基本ルール
一年基準(ワン・イヤー・ルール)は、資産や負債の性質を正しく分類し、企業の財務状況を明確にするための基本ルールです。
ただし、実際の会計処理では「正常営業循環基準」を優先し、その後に一年基準を適用するという流れを押さえておきましょう。
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