年金制度の専門用語の中でも、「代行返上(だいこうへんじょう)」は少し複雑でわかりにくい言葉です。
これは、かつて多くの企業が導入していた 厚生年金基金 に関連する制度であり、現在の企業年金制度の理解にも欠かせない重要なポイントです。
本記事では、代行返上の仕組みや背景を初心者にもわかりやすく整理して解説します。
代行返上とは?
代行返上とは、厚生年金基金が担っていた「代行部分」を国に返し、企業独自の上乗せ部分(プラスアルファ部分)を確定給付企業年金へ移行することを指します。
この制度は、2002年(平成14年)4月1日に施行された 確定給付企業年金法 によって可能となりました。
代行返上を行うと、厚生年金基金は消滅または解散したものとみなされ、代行給付の支給義務から解放されます。その一方で、過去の代行部分に関わる積立金(最低責任準備金相当額)を国に返還する必要があります。
代行返上の手順
代行返上は通常、次の2つのステップで進められます。
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将来返上:将来の代行給付に関する支給義務を停止
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過去返上:これまで積み立ててきた代行部分の積立金(最低責任準備金相当額)を国に返還
なお、これらを 同時に行うことも可能 です。
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将来返上 → 2002年(平成14年)4月から実施可能
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過去返上 → 2003年(平成15年)9月から実施可能
と、制度導入後に段階的に運用が始まりました。
なぜ代行返上が導入されたのか?
厚生年金基金は、企業にとって従業員への手厚い年金保障を提供する仕組みでした。
しかし、バブル崩壊後の運用環境の悪化や少子高齢化の進行により、代行部分を含む基金の運営が重い負担となり、制度の持続可能性が問題視されるようになりました。
そこで、基金の「代行部分」を国に返上し、企業は自社の裁量で運営できる 確定給付企業年金 や 確定拠出年金 へ移行できる仕組みが整えられたのです。
代行返上のポイント整理
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代行返上とは、厚生年金基金の代行部分を国に返し、企業年金(確定給付企業年金)へ移行すること
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2002年に確定給付企業年金法が施行され、制度が可能になった
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手順は「将来返上」と「過去返上」の2段階(同時実施も可能)
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厚生年金基金は消滅または解散し、企業は代行給付の義務を免れる
まとめ
「代行返上」とは、厚生年金基金の役割を国に戻しつつ、企業独自の年金制度へ切り替える仕組みです。
複雑に見える制度ですが、その背景には 年金財政の安定化 と 企業年金の柔軟化 という目的があります。
将来の年金額や企業年金制度の内容を理解するうえで、「代行返上」という用語を知っておくことはとても大切です。
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