日本の年金制度では、多くの企業が従業員を厚生年金に加入させる「強制適用事業所」となります。
しかし、すべての事業所が自動的に対象となるわけではありません。
従業員の規模や業種によっては「強制適用」の対象外となる場合があり、その際に登場するのが「任意適用事業所」です。
この記事では、任意適用事業所の意味、対象となる条件、メリット・注意点を、専門家の視点でわかりやすく解説します。
任意適用事業所とは?
任意適用事業所とは、本来は厚生年金の強制適用対象ではない事業所でも、一定の条件を満たすことで厚生年金の適用を受けられる事業所のことです。
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対象:強制適用事業所以外の事業所
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要件:事業所で働く人の 1/2以上の同意 があること
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手続き:事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受ける
この仕組みにより、70歳未満の従業員を包括的に厚生年金に加入させることができます。
任意適用事業所の条件と仕組み
強制適用事業所との違い
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強制適用事業所
→ 法人事業所、または常時5人以上の従業員を雇う個人事業所(農林水産業やサービス業など一部業種を除く) -
任意適用事業所
→ 上記以外の事業所でも、従業員の同意を得て申請することで適用可能
任意適用のポイント
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導入時の条件
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従業員の過半数(1/2以上)が同意すれば、事業主が申請可能
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厚生労働大臣の認可が必要
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適用解除の条件
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被保険者の 3/4以上の同意 があれば、事業主が申請し、適用事業所でなくすことができる
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任意適用事業所のメリット
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✅ 従業員にとっての安心
国民年金(基礎年金)のみではなく、老後に厚生年金を受給できるため、将来の年金額が増える -
✅ 事業所にとっての信頼性向上
社会保険に加入していることは、求職者にとって安心材料となり、採用面でもプラスになる -
✅ 労働環境の整備につながる
従業員の福利厚生が充実することで、定着率の改善や企業のイメージアップに寄与
任意適用事業所の注意点
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🔹 事業主の負担増
厚生年金の保険料は会社と従業員で折半するため、事業主に一定のコスト負担が発生します。 -
🔹 手続きが必要
自動的に適用されるわけではなく、従業員の同意を得た上で事業主が申請する必要があります。 -
🔹 適用解除も従業員の同意が必要
「導入したがやっぱりやめたい」という場合でも、被保険者の3/4以上の同意が求められます。
事例:任意適用事業所のケース
例えば、従業員が3人しかいない小規模なデザイン事務所。
この場合は強制適用事業所には該当しませんが、従業員の2人以上が同意すれば、事業主が申請して任意適用事業所となり、厚生年金に加入できます。
まとめ
任意適用事業所は、小規模事業所や一部業種の事業所でも、従業員の同意を得ることで厚生年金に加入できる制度です。
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強制適用の対象外でも加入可能
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従業員の福利厚生や将来の年金額が充実
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事業主には保険料負担が発生するが、企業の信頼性向上につながる
小規模事業所にとっては負担もありますが、従業員の安心や企業のイメージを考えると大きなメリットがあります。
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