企業の経理や会計に携わる人なら、一度は耳にする「企業会計原則」。
これは企業が会計処理を行う際に守るべき基本ルールであり、財務諸表(決算書)を正しく作成するための“会計の憲法”とも呼ばれる重要な基準です。
この記事では、
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企業会計原則とは何か
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会計の基本を支える「7つの一般原則」
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「会計公準」との違い
を初心者にもわかりやすく解説します。
✅ 企業会計原則とは?
企業会計原則(きぎょうかいけいげんそく)とは、公正で信頼できる会計処理を行うための基本的な指針です。
1949年に旧・大蔵省(現在の金融庁)によって制定され、長年にわたり日本の企業会計の土台として機能してきました。
この原則は「法律」ではありませんが、上場企業の決算書作成や会計監査などにおいては実質的に遵守が求められています。
つまり、企業会計原則を守らない会計処理は、「信頼できない決算」とみなされる可能性があるのです。
📘 企業会計原則を構成する3つの柱
企業会計原則は、次の3つのパートで構成されています。
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一般原則
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損益計算書原則
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貸借対照表原則
このうち最も基本で重要なのが「一般原則」で、企業会計全体に共通する7つのルールが定められています。
🏛 7つの一般原則をわかりやすく解説
① 真実性の原則
企業会計は、企業の財政状態と経営成績を真実に報告しなければなりません。
ここでいう「真実」とは、会計基準に照らして妥当と認められる“相対的な真実”を意味します。
例:減価償却方法(定額法・定率法など)を正しく選び、会計基準に沿って処理すれば「真実」と認められる。
② 正規の簿記の原則
すべての取引を正確かつ秩序立てて記録することが求められます。
実務では「複式簿記」による記録がこれに該当します。
網羅性・検証可能性・秩序性の3要素を満たす帳簿が必要。
③ 資本取引・損益取引区分の原則
株式発行などの資本取引と、商品売買などの損益取引を明確に区別することが必要です。
利益剰余金(配当可能)と資本剰余金(維持すべき資本)を混同してはいけない。
④ 明瞭性の原則
決算書の表示は誰が見ても理解できる明瞭さを持たなければなりません。
重要な会計方針や後発事象(決算後の重大な出来事)は注記として開示します。
例:固定資産の減価償却方法や評価基準などを明示。
⑤ 継続性の原則
一度採用した会計方針は毎期継続して適用する必要があります。
頻繁に方法を変えると、利益操作の疑いを招きます。
ただし、正当な理由(会計基準変更など)があれば例外的に変更可能。
⑥ 保守主義の原則
企業の財政に不利な影響が生じる恐れがある場合、安全側に立った健全な会計処理を行うべきです。
例:貸倒引当金を多めに設定、収益を遅めに認識するなど。
過度な保守主義は利益の歪曲を招くため注意が必要です。
⑦ 単一性の原則
税務申告や金融機関向けなど、目的が異なる財務諸表を複数作る場合でも、基礎となる会計記録は1つでなければならないという原則です。
いわゆる「二重帳簿の禁止」を意味します。
💡 会計公準とは?3つの基本的前提
企業会計原則と混同されやすいのが「会計公準(かいけいこうじゅん)」です。
これは、会計が成り立つ前提条件を示したものです。
| 会計公準 | 内容 |
|---|---|
| 企業実体の公準 | 企業と所有者は別の存在として扱う |
| 継続企業の公準 | 企業は今後も継続して存続することを前提とする |
| 貨幣的測定の公準 | 会計は貨幣(円)で測定・記録される |
⚠️ 企業会計原則を守らないとどうなる?
企業会計原則は法律そのものではありませんが、
会社法・金融商品取引法・税法などと密接に関係しています。
もし企業会計原則を無視した会計処理を行えば、
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決算書が「不適正意見」とされる
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株主や金融機関の信頼を失う
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上場企業であれば法的リスクに発展する
可能性があります。
🧭 企業会計原則と企業会計基準の違い
| 比較項目 | 企業会計原則 | 企業会計基準 |
|---|---|---|
| 制定時期 | 1949年 | 2001年以降 |
| 内容 | 基本的な原理・原則 | 個別の取引や処理に関する詳細基準 |
| 性質 | 概念的・包括的 | 実務的・具体的 |
近年では「企業会計基準」(ASBJによる基準)が中心ですが、
企業会計原則は依然として日本会計のベースとして位置づけられています。
🏁 まとめ:企業会計原則を理解して信頼される会計処理を
企業会計原則は、企業会計の基本となる**“7つの一般原則”と“3つの会計公準”**から構成されています。
それぞれの原則を理解することで、公正で信頼性の高い財務諸表を作成できるようになります。
初心者の方はまず「真実性」「明瞭性」「継続性」の3つを意識してみましょう。
企業会計原則は、単なるルールではなく、企業の信頼を守るための会計の哲学なのです。
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