企業のM&A(合併・買収)を正しく会計処理するためには、「企業結合会計基準」の理解が欠かせません。
しかし、取得や共通支配下の取引、逆取得など、専門用語が多く難しく感じる方も多いでしょう。
この記事では、会計の専門家の視点から、企業結合に関する会計基準を初心者にもわかりやすく整理して解説します。
企業結合会計とは
企業結合会計とは、複数の会社や事業が1つの報告単位に統合される取引に対する会計処理のことです。
ここでいう「報告単位」とは、財務諸表の作成単位を指します。
企業結合には主に以下の3つのタイプがあります。
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会社と会社の統合
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会社と事業の統合
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事業と事業の統合
これらの取引には、吸収合併・新設合併・株式交換・事業譲渡など、さまざまな形式があります。
企業結合会計では、これらの取引の「前後関係」に注目し、次の3つの分類に基づいて会計処理を行います。
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取得
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共通支配下の取引
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共同支配企業の形成
取得とは
「取得」とは、会社または事業に対して支配を獲得することをいいます。
支配とは、経営の意思決定を左右できる状態を指し、一般的には株式の50%超を保有している状態を意味します。
会計処理の方法
取得の場合、支配を獲得した企業はパーチェス法(購入法)によって処理を行います。
パーチェス法では、取得する会社や事業を時価ベースで取り入れます。
ただし、支払対価と時価の差額が生じる場合には以下のように処理されます。
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支払が多い場合 → 「のれん」
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支払が少ない場合 → 「負ののれん」
逆取得とは
「逆取得」とは、企業結合で表面上は支配しているように見えても、実質的には支配されるケースを指します。
例えば、吸収合併で存続会社が自社株式を大量に交付した結果、相手企業が親会社の立場になる場合です。
会計処理の方法
逆取得の場合、支配を獲得していないため、帳簿価額で会計処理を行います。
つまり、取得のように時価ではなく、従来の帳簿上の金額をそのまま使用します。
共通支配下の取引とは
共通支配下の取引とは、企業結合の前後で支配関係が変わらない取引のことです。
たとえば、同じ親会社のもとにある2つの子会社が合併するケースなどが該当します。
会計処理の方法
共通支配下の取引では、支配関係に変化がないため、帳簿価額で処理します。
この場合、連結財務諸表上では内部取引として消去されるため、全体の財務状況に大きな変化はありません。
共同支配企業の形成とは
共同支配企業の形成とは、複数の独立企業が共同で新しい会社を設立し、その会社を共同で支配することです。
代表的なケースとしては、A社とB社がそれぞれ事業を新会社に譲渡し、共同出資するような形態が挙げられます。
会計処理の方法
支配される側(新会社)は、受け入れた事業を帳簿価額で処理します。
支配する側(親会社)は、出資した事業の価額をもとに株式を受け取り、持分法に従って会計処理を行います。
企業結合会計の理解ポイントまとめ
企業結合会計は、取引の名称(合併や譲渡など)ではなく、取引前後の支配関係の変化が重要です。
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支配を獲得した → 「取得」
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支配関係が変わらない → 「共通支配下の取引」
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複数の企業で共同支配 → 「共同支配企業の形成」
この3つを正しく区別することで、企業結合の会計処理を正確に行うことができます。
まとめ
企業結合会計は、M&Aや事業再編など企業経営における重要な場面で不可欠な知識です。
「取得」「共通支配下」「共同支配企業」の違いを理解し、取引の本質を見極めることが正確な会計処理の第一歩です。
この記事が、企業結合会計の全体像をつかむ一助となれば幸いです。
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