修繕引当金・特別修繕引当金とは

修繕引当金・特別修繕引当金とは?仕訳例と経理実務でのポイントをわかりやすく解説

企業の決算整理では、「修繕引当金」や「特別修繕引当金」という勘定科目が登場します。日常の仕訳ではあまり使わないため、経理担当者の中には扱いに迷う方も多いでしょう。この記事では、初心者でも分かるように修繕引当金と特別修繕引当金の違い、仕訳例、計上のポイントを詳しく解説します。

修繕引当金とは

修繕引当金とは、建物や機械などの固定資産を維持するために、将来の修繕費用を見越して計上する費用です。たとえ当期に修繕が行われなくても、修繕が必要な事実は当期に発生していると考え、発生主義に基づき費用として計上します。

  • 借方:修繕引当金繰入(費用)

  • 貸方:修繕引当金(負債)

修繕引当金は主に大規模な工場設備を所有する企業や、定期的に修繕が必要な固定資産を持つ産業で用いられます。負債として貸借対照表に計上され、将来の資金繰りの見通しを立てやすくする役割もあります。

 

特別修繕引当金とは

特別修繕引当金は、毎年ではなく数年おきに行われる大規模修繕に備えるための引当金です。船舶や溶鉱炉、ガスホルダーなど、大型設備を保有する企業で使用されることが多く、修繕のタイミングが1年を超える場合は固定負債として計上されます。

  • 借方:特別修繕引当金繰入(費用)

  • 貸方:特別修繕引当金(負債)

修繕の必要性は当期に発生しているとみなすため、発生主義の考え方に従い、当期費用として引当金を計上します。

修繕引当金と特別修繕引当金の違い

項目 修繕引当金 特別修繕引当金
修繕頻度 毎年行う定期修繕 数年おきの大規模修繕
計上時期 当期中に実施できなかった修繕費用 将来の修繕費用を当期分として分割計上
負債区分 流動負債 固定負債(1年以内なら流動負債に振替)

1年以内に行われる修繕は修繕引当金、1年以上先の修繕は特別修繕引当金として区分するのが基本です。

特別修繕引当金の仕訳例

例1:5年後の溶鉱炉修繕に備えて計上

  • 借方:特別修繕引当金繰入 10,000,000円

  • 貸方:特別修繕引当金 10,000,000円

※1年以内に実施されない修繕なので固定負債として計上。

例2:翌年度に修繕予定がある場合、流動負債へ振替

  • 借方:特別修繕引当金繰入 10,000,000円

  • 貸方:特別修繕引当金 10,000,000円

貸借対照表上で固定負債から流動負債へ表示区分を変更。

例3:修繕実施時の支払

  • 借方:特別修繕引当金 40,000,000円

  • 借方:修繕費 10,000,000円

  • 貸方:普通預金 50,000,000円

引当金で不足する分は当期費用として計上します。

修繕引当金・特別修繕引当金の実務上のポイント

  • 計上は義務ではなく企業判断で行う

  • 大規模設備を持つ企業では、修繕費用の影響が大きいため計画的に計上

  • 発生主義に基づき、修繕の原因は当期に発生しているとして処理する

  • 負債区分(流動/固定)の見極めが重要

 

まとめ

修繕引当金と特別修繕引当金は、企業の固定資産維持に欠かせない会計処理です。仕訳例を理解することで、経理担当者は計上漏れを防ぎ、決算整理の精度を高めることができます。特に大型設備を持つ企業では、将来の修繕費用を適切に見積もることが資金繰りや経営判断に直結します。

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