事業で使う建物や機械などは、時間が経てばどうしても傷んできます。その修理にかかる費用が「修繕費」です。ただし、修繕の内容によっては税務上「その年の経費にならない」扱いになることもあります。
この記事では、修繕費が経費として認められる条件や、よく混同される「資本的支出」の判断方法まで、初心者でも分かるように丁寧に解説します。
税務の判断を間違えると、思わぬ税負担につながることもあるので、ぜひ参考にしてください。
修繕費とは?
修繕費とは、事業で使っている有形固定資産(建物・機械設備・車両など)を通常の状態に維持したり、壊れた部分を直したりするための支出のことです。
代表的な例はこんな感じです。
・外壁の塗り替え
・ガラスの交換
・給排水設備の修理
・機械の部品交換
・自然災害で損傷した資産の原状回復
あくまで「元の状態に戻すための支出」がポイントです。
修繕費と消耗品費の違い
よく質問されるのが「修繕費と消耗品費の使い分けは?」という点です。
ざっくり言うと、
・修繕費…すでに持っている物を修理した場合
・消耗品費…新しく購入した場合
机の例で説明すると分かりやすいです。
・壊れた机を修理した → 修繕費
・新しい机を買った → 消耗品費(10万円未満の備品)
会計ソフトによって勘定科目名が違うこともあるので、処理前に確認しておくと安心です。
修繕費の仕訳例
例1)工場の機械を修理し、代金50,000円を現金で支払った
借方:修繕費 50,000円
貸方:現金 50,000円
例2)建物の外壁塗装を行い、150,000円を普通預金から振込で支払った
借方:修繕費 150,000円
貸方:普通預金 150,000円
個人事業主の場合:修繕費はそのまま経費になる?
はい、経費にできます。
確定申告時に、
・収支内訳書(白色)
・青色申告決算書
の「修繕費」の欄に金額を記載するだけです。
ただし、後述する「資本的支出」に該当してしまうと、その年の経費にできない点には注意が必要です。
修繕費でも「資産」として扱われるケースがある
修理内容によっては、修繕費ではなく「資本的支出」と判断されることがあります。
これは、修理によって資産の価値が上がったり、使用可能期間が延びたりするケースです。税務上は、その年の費用にはできず、固定資産として計上し、減価償却で複数年にわたって費用化します。
資本的支出とは?具体例で理解しよう
資本的支出の典型例は次のとおりです。
・建物に非常階段を新設した
・用途変更のための大規模な内装工事
・機械の部品を高性能品に交換し、価値が増えた部分
・建物の機能を向上させる大規模リフォーム
イメージとしては、
修繕費=ゼロに戻す
資本的支出=ゼロからプラスにする
と考えると判断しやすいです。
資本的支出でも即経費にできる例外
次のような場合は、その年の経費として処理できます。
・1回の金額が20万円未満
・おおむね3年以内の周期で行われる修繕
・60万円未満または取得価額の10%以下の修理(不明な場合)
・法人は継続処理を条件に30%ルールまたは10%ルールの適用も可能
税務で特に修繕費として認められるもの
修繕目的でなくても、次の支出は修繕費として扱われます。
・建物の解体移築(条件付き)
・機械装置の移設費用
・地盤沈下による原状回復のための地盛りや移設
・砂利敷きや砂利補充による水はけ改善
実際の工事名称ではなく「実質」で判断するため、迷う場合は税理士相談がベストです。
資本的支出か修繕費か判断するチェックポイント
税務では次の視点で判断します。
・20万円未満か
・修繕の周期が3年以内か
・価値や耐久性が増していないか
・維持管理の範囲に収まるか
・60万円未満か、取得価額の10%以下か
・法人は継続処理の有無
どれか1つではなく、総合判断となります。
まとめ
修繕費は、資産の原状回復や機能維持のための支出で、通常はその年の経費にできます。
一方で、価値が上がる工事や耐用年数が延びるような改良は、資本的支出として扱われ、減価償却の対象になります。
修繕費なのか資本的支出なのかは税額に大きく影響するため、判断が難しいケースでは専門家に相談しながら処理するのが安心です。
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