個別法とは

個別法とは?棚卸資産評価の基本と仕訳例まで徹底解説

商品や製品を扱う企業では、期末に棚卸を行い、在庫の価値を正確に把握する必要があります。
棚卸資産の評価方法にはさまざまな方法がありますが、その中でも個別法(specific identification method)は、商品ごとの取得原価を基に評価する方法として基本的な手法の一つです。

この記事では、個別法の特徴、向いている棚卸資産、メリット・デメリット、さらに具体的な仕訳例までをわかりやすく解説します。

個別法とは

個別法は、棚卸資産ごとの購入単価をそのまま評価額として計算する方法です。
例えば、以下のような場合を考えます。

  • 商品A:2,000円

  • 商品B:1,500円

  • 商品C:5,000円

期末に商品Cだけが在庫として残っていれば、期末棚卸高も5,000円として評価します。

個別法の特徴は、商品の「実際の動き」に忠実である点です。受入・払出・残高を個別に管理できるため、売上と原価の対応関係が正確になります。

原価法との関係

棚卸資産の評価方法は大きく「原価法」と「低価法」に分かれます。

  • 原価法:取得原価(仕入価格など)を基に評価

  • 低価法:取得原価と期末の時価を比較し、低い方で評価

個別法は、原価法の一つとして位置付けられます。その他の原価法には、総平均法、移動平均法、先入先出法などがあります。

個別法と他の評価方法の違い

方法 特徴 メリット デメリット
個別法 商品ごとの仕入単価を評価 正確な原価計算が可能 管理が大変、手間がかかる
先入先出法 先に仕入れたものから先に販売 期末在庫が時価に近くなる 実際の売れ行きと差異が出る場合あり
総平均法 期首在庫と期中仕入を合算し平均単価で評価 計算が簡単 期末まで評価額が確定しない
移動平均法 仕入ごとに平均単価を再計算 随時評価可能 手間がかかる
最終仕入原価法 期末直前の仕入単価で評価 計算が簡単 期末まで評価できない
売価還元法 売価から原価を逆算 小売業で便利 個別原価が不明確な場合あり

個別法のメリット・デメリット

メリット

  • 正確な原価計算:商品の取得原価をそのまま評価できる

  • 費用収益対応:売上と原価が正確に対応し、期間損益の計算が正確

デメリット

  • 管理が手間:仕入・在庫・販売の個別管理が必要

  • 大量仕入には不向き:商品点数が多い場合は管理が煩雑

 

個別法に向いている棚卸資産

個別法は、以下のような商品に向いています。

  • 高額商品(宝石、美術品、不動産、建築物など)

  • 物流数が少なく、個別管理が可能な商品

大量生産・大量販売される一般商品には不向きです。

個別法を用いた仕訳例

期首在庫と期中仕入、期末在庫の状況を例に解説します。

  • 期首商品A:10万円

  • 期中仕入

    • 商品B:10万円

    • 商品C:3万円

    • 商品D:5万円

  • 期中販売:商品A、B

  • 期末在庫:商品C、D

期末棚卸高の計算

商品C(3万円) + 商品D(5万円) = 8万円

仕訳例

借方 金額 貸方 金額
期首商品棚卸高 100,000円 商品 100,000円
商品 80,000円 期末商品棚卸高 80,000円

このように、個別法では在庫ごとの取得原価を正確に管理し、売上原価計算も対応できます。

まとめ

個別法は、期末棚卸資産を仕入単価で正確に評価できる方法です。
売上と原価の対応が明確になり、期間損益の計算も正確になりますが、個別管理が必要なため手間がかかります。

高額で個別性の高い商品を扱う場合には最適な評価方法です。
反対に、低単価で大量の商品には総平均法や先入先出法のほうが実務的には向いています。

さらに参照してください:

固定資産売却益とは?減価償却費の仕訳や税金計算までわかりやすく解説