企業会計において欠かせないのが「財務諸表」です。
その中でも「個別財務諸表」は、企業単体の経営状況を把握するうえで基本となる資料です。
この記事では、個別財務諸表の意味や連結財務諸表との違い、作成時の注意点、そして包括利益の表示が必要かどうかを専門家の視点から詳しく解説します。
個別財務諸表とは
個別財務諸表とは、1つの企業単体の財務状況や経営成績を示すために作成される決算書類です。
金融商品取引法や会社法などに基づき作成され、主に以下の書類で構成されます。
貸借対照表
損益計算書
キャッシュ・フロー計算書
株主資本等変動計算書
附属明細書
一般的に「財務諸表」と呼ばれるものはこの個別財務諸表を指します。グループ企業に属さない中小企業などでは、この個別財務諸表のみを作成して決算を行うのが一般的です。
個別財務諸表と連結財務諸表の違い
個別財務諸表が「企業単体」の状況を示すのに対し、連結財務諸表は「企業グループ全体」の状況を示すものです。
親会社と子会社、関連会社などを一体の経済単位としてみなし、全体の財政状態や経営成績を把握する目的で作成されます。
連結財務諸表の開示制度は2000年3月から導入され、現在では上場企業などに作成が義務付けられています。
連結財務諸表では、グループ内取引や内部利益を相殺するため、グループ全体の実態に近い業績を把握できるのが特徴です。
一方、個別財務諸表ではグループ内の取引もそのまま計上されるため、単体ベースでの財務状況を確認する際に活用されます。
個別財務諸表作成時の注意点
連結財務諸表を作成している企業であっても、個別財務諸表の作成は省略できません。
金融商品取引法上の有価証券報告書などとは異なるルールが適用されるため、別途作成する必要があります。
また、グループ企業間で会計方針が異なると、連結時の合算作業に大きな負担が生じます。
そのため、グループ全体で会計処理の基準や方針を統一しておくことが重要です。
なお、連結財務諸表を作成する企業は、個別財務諸表における一部の注記を省略できる場合があります。
個別財務諸表に包括利益の表示は必要?
包括利益とは、企業が保有する資産の含み益や含み損を反映した「当期純利益」を拡張した指標のことです。
包括利益は国際会計基準(IFRS)に対応する形で、主に連結財務諸表で表示されます。
一方、個別財務諸表では包括利益の表示は義務付けられていません。
もし個別財務諸表に包括利益を反映すると、課税所得や利益配分の計算に影響を及ぼす可能性があるためです。
したがって、個別財務諸表では「包括利益の表示は不要」とされています。
まとめ
個別財務諸表は企業単体の財政状態や業績を明らかにするための基本的な決算書であり、連結財務諸表とは目的も内容も異なります。
連結財務諸表では企業グループ全体を、個別財務諸表では1社単体を評価するものとして、両者を正しく区別して理解することが重要です。
また、包括利益の表示は個別財務諸表には必要ない点にも注意しましょう。
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