決算で売上原価を計算するには、期末にどれだけの商品が残っているかを正確に把握する必要があります。棚卸資産の評価方法は複数ありますが、特によく使われるのが先入先出法です。この記事では、先入先出法の仕組み、商品有高帳の記入方法、さらに移動平均法との違いを初心者にも理解しやすい形で解説します。
先入先出法とは
先入先出法は、最初に仕入れた商品から順に販売されたと仮定して在庫を評価する方法です。英語表記では First In First Out と呼ばれ、FIFO と略されます。食品や日用品など、実際に古い商品から出庫される場面で採用されやすい評価方法です。
棚卸資産とは、商品や製品に限らず、原材料、仕掛品、消耗品なども含む広い概念です。棚卸とは、倉庫などに残っているものを実際に確認する作業のことを指します。
先入先出法による計算の流れ
先入先出法では、古い仕入から順に出庫されると考えて計算します。
例えば、次のように仕入があったとします。
・4月仕入 単価80円
・5月仕入 単価110円
・6月販売
6月に販売した商品は、4月、5月の順番で消化されたとみなします。期末に近づくほど仕入単価が変動しやすいため、期末残高には新しい単価が反映される特徴があります。
この計算方法により、売上原価は古い単価が反映され、期末棚卸高は比較的新しい単価が反映されることになります。
移動平均法とのちがい
移動平均法は、仕入のたびに在庫全体の平均単価を計算し直す方法です。
在庫の動きがあるたびに単価が更新されるため、常に平均単価で出庫額と棚卸資産を算定します。
同じ仕入内容でも、先入先出法と移動平均法では下記のように結果が変わることがあります。
・売上原価の金額が変わる
・期末棚卸高の金額が変わる
評価方法が異なれば、利益計算にも影響が出るため、決算で選択した方法を継続して使う必要があります。変更する場合は、税務上の手続きが求められます。
先入先出法の商品有高帳の書き方
商品有高帳は、商品の数量と単価を管理する帳簿です。先入先出法を用いる場合、仕入れた単価ごとに区分して記入し、出庫時も古い単価から順に消していきます。
仕入が複数単価で発生する場合は、それぞれの単価ごとに数量を分けて管理します。返品があった場合は、どの単価の商品が戻ったのかを明確に記入します。
システム管理が一般的ですが、基礎的な仕組みを理解しておくと実務に役立ちます。
先入先出法のメリット
先入先出法は、商品の流れと単価の流れが一致しやすい点が大きな利点です。実態に近い流れで在庫を評価しやすく、期末棚卸高が時価に近づきやすい傾向があります。特に単価変動が激しい商品を扱う場合は、貸借対照表における信頼性が高まると言われます。
先入先出法のデメリット
仕入単価が頻繁に変わる商品では、記帳が複雑になりやすいという課題があります。また、最新の単価が期末在庫に反映される一方で、売上原価には古い単価が残るため、急激な単価変動があると利益の算定が実勢とズレることもあります。
まとめ
先入先出法は、実務でも簿記でも幅広く使われる棚卸資産の評価方法です。移動平均法との違いを理解することで、売上原価や利益がどう変わるのかが見えてきます。どちらの方法を採用するかは、扱う商品の特性や単価変動の頻度を踏まえて選ぶことが大切です。
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