事業を始めるとき、必ず考えるのが「どう資金を集めるか」という点です。
その中でも多くの企業が活用する代表的な方法が「出資金」。
返済が不要という大きな魅力がある一方、注意点も存在します。
この記事では、出資金の基礎から、メリット・デメリット、出資を受けた際の会計処理まで、会計の専門家としてわかりやすく整理して解説します。
これから起業する方や、資金調達の仕組みを理解したい方に特に役立つ内容です。
出資金とは?基本の仕組み
出資金とは、 事業の運営や成長のために、出資者(株主・組合員など)が拠出するお金 のことです。
返済義務がない点が特徴で、企業は出資金を自己資本として活用できます。
ただし、出資者はお金を提供する代わりに、
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配当金を受け取る権利
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企業の重要事項への議決権
といった「見返り」を得るのが一般的です。
株式会社の出資金
株式会社では、出資は 株式を購入する形 で行われます。
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出資額 = 購入した株式の対価
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受け取る権利:議決権・配当金
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会計上の位置付け:資本金または資本準備金
株主は、投資額に比例した権利を持ち、経営にも一定の影響力を持つ点が特徴です。
協同組合の出資金
協同組合では目的が「利益の追求」よりも 組合員相互の助け合い にあります。
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議決権は原則「1人1票」
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出資額の大小は組織運営への影響にあまり関係しない
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配当も比較的小規模
株式会社のように出資=経営支配とは位置付けが異なる点を押さえておきましょう。
出資と融資・投資の違い
| 取引 | 返済義務 | リターン | 会計上の区分 |
|---|---|---|---|
| 出資 | なし | 配当・議決権 | 純資産(資本金など) |
| 投資(広義) | なし | 配当・売却益など | ― |
| 融資(借入) | あり | なし(利息を支払う側) | 負債 |
出資は返済義務がないため、企業にとっては資金繰りが安定します。一方で、出資者に経営権を与えるという特徴もあります。
出資金のメリット
【企業側】返済義務がないので資金繰りが安定する
借入金とは異なり、返済スケジュールを気にせずに事業資金として活用できます。
スタートアップや創業初期に特に有効です。
【出資者側】配当金などのリターンが期待できる
企業が成長すれば配当金を受け取ることができ、株式価値が上昇すれば売却益も狙えます。
出資金を受けるデメリット
【企業側】経営への介入リスク
出資者に議決権が生じるため、経営判断に影響が出る可能性があります。
特に外部投資家からの出資は慎重に検討すべきです。
【出資者側】元本保証がない
企業がうまくいかなかった場合、出資額が戻らない可能性があります。
これは融資との大きな違いです。
出資を受ける方法と流れ
一般的なプロセスは次の通りです。
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出資条件の決定(出資額・株数・議決権など)
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出資者との合意
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契約書(出資契約)の作成
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出資金の払い込み
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法人の場合は資本金として計上し、必要な登記手続きへ
スタートアップの場合、投資家との交渉では投資比率や経営関与の範囲が重要になります。
出資金の会計処理(仕訳)
株式会社が現金で出資を受けた場合
出資金の一部を資本準備金に振り分けることもありますが、基本構造は同じです。
出資金の返済が必要になるケース
原則として返済義務はありませんが、次のケースでは返還が行われることがあります。
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出資者との合意で払い戻しを行う場合
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組合員が脱退する場合
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清算時に残余財産がある場合
ただし、会社法上は資本の払戻しには厳しい制限があり、債権者保護手続きが必要です。
出資以外の資金調達方法も検討しよう
出資以外にも、企業が利用できる資金調達手段はさまざまです。
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銀行融資
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補助金・助成金
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クラウドファンディング
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社債発行
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ベンチャーデット
出資は強力な手段ですが、「経営権を渡す」性質を伴うため、他の方法との組み合わせを検討することが重要です。
まとめ:出資金の特徴を知り、目的に合った資金調達を選ぼう
出資金は返済の必要がなく、事業の成長を後押しする大きな力になります。
一方で、出資者に経営権が生まれるなどデメリットも存在します。
事業のステージ・資金需要・経営方針を踏まえ、
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出資を受けるべきか
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どの程度の持分を提供するか
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他の資金調達法とどう組み合わせるか
といった点を慎重に考えながら活用していくことが大切です。
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