会社分割は、企業が事業の一部を切り出して別会社に移すための制度です。
しかし、分割の方法には「分社型分割」と「分割型分割」があり、それぞれ特徴や税務上の扱いが異なります。
本記事では、初心者にもわかりやすく、両者の違いや税務上の考え方を解説します。
1. 分社型分割と分割型分割の基本
分社型分割とは
分社型分割は、会社分割の代表的な形式です。
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分割した事業を承継会社(引き継ぐ会社)に移し
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その対価として承継会社の株式を分割会社(事業を切り出す会社)が受け取る
この仕組みは、承継会社が新たに株式を発行して分割会社に割り当てる点が特徴です。簡単に言えば、事業の移転と同時に「現物出資」に似た形で株式が交付されるイメージです。
分割型分割とは
かつて存在した分割型分割は、分割の対価を分割会社ではなく、分割会社の株主に直接割り当てる方式でした。
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旧商法では「人的分割」とも呼ばれ
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実質的には吸収合併に近い性質があります
しかし、会社法(平成18年施行)ではこの形式は廃止され、「分社型分割+剰余金の配当」という形に統合されています(会社法763条12号)。
2. 税務上の考え方
会社分割では、移転する資産や負債に応じて税務上の扱いが変わります。
物的分割と人的分割
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分社型分割(物的分割)
分割法人から承継法人へ資産・負債を移す際、利益積立金の確定が必要になり、事業年度が分断されます。 -
分割型分割(人的分割)
事業年度は分割法人のまま継続し、吸収合併と似た税務上の結果が生じます。
適格分割と非適格分割
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適格分割
移転資産の簿価で承継されるため、原則として課税が生じません。税務上の優遇措置が受けられる形です。 -
非適格分割
資産を時価で移転するため、含み益のある資産については分割法人に譲渡益課税が生じ、株主にもみなし配当課税や譲渡益課税が発生します。
3. 分社型分割の具体例
例えば、製造業A社が不採算事業を切り出して新会社B社に移す場合、分社型分割を行うと以下のようになります:
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A社の不採算事業の資産・負債をB社に移転
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B社が新株を発行してA社に割り当て
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A社はB社の株式を取得し、事業を切り離す
この場合、適格分割の条件を満たせば、資産移転による課税は発生しません。
まとめ
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分社型分割:事業を承継会社に移転し、株式を受け取る形式。現物出資に似た性質。
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分割型分割:旧制度の形式で、株主に対価を直接割り当てる方法。吸収合併に近い性質。
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税務上の注意点:適格分割であれば課税なし、非適格分割では譲渡益課税やみなし配当課税のリスクあり。
会社分割を行う際は、形式や税務上の取り扱いを正確に理解することが重要です。特に適格分割の要件を満たすかどうかで、課税負担が大きく変わります。
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