法人の決算は、1年間の業績を正確に計算し報告する重要な手続きです。
しかし、決算が確定した後に誤りが発覚することがあります。
その際に必要になるのが「前期損益修正益」と「前期損益修正損」です。本記事では、これらの勘定科目の意味、仕訳方法、税務上の扱いまで、初心者にもわかりやすく解説します。
前期損益修正益とは
「前期損益修正益」とは、前期以前の決算で見逃された収益を、当期で修正する際に使用する勘定科目です。たとえば、前期に計上すべき売上が少なかった場合、当期で修正することで正しい収益を反映させます。
会計上の考え方
会計では「期間損益の正確な計算」が前提です。過去の誤りが発覚した場合、当期に修正処理を行います。ただし、大企業は「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」により、前期損益修正益という科目で過年度の修正を行うことはできません。中小企業のみが利用可能です。
決算書上では当期の利益ではないため、特別損益の「特別利益」として計上します。
税務上の考え方
税務では、過去の収益を修正する場合、修正申告書を提出して法人税額や繰越欠損金の調整を行います。修正によって追加で納税が必要になることもあるため、適切な手続きが重要です。
仕訳例
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売上高の過少計上
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前期に10,000円の売上を計上していたが、実際は20,000円の場合
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当期の仕訳:
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棚卸高の計上漏れ
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前期に50,000円の商品棚卸を計上していたが、実際は80,000円
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当期の仕訳:
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前払費用の誤計上
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前期に家賃1,000,000円を費用計上していたが、実際は前払家賃
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当期の仕訳:
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前期損益修正損とは
「前期損益修正損」は、前期以前の決算で見逃された費用や損失を、当期で修正する際に使用する勘定科目です。
会計上の考え方
過去の費用の誤りも正しい期間損益計算のために修正が必要です。大企業では前期損益修正損での修正は認められず、中小企業のみが使用可能です。決算書上では「特別損失」として計上します。
税務上の考え方
税務では、過去の費用や損失を修正する場合、納税者が自主的に「更正の請求」を行います。修正により法人税が減少したり、還付金が増えることがあります。ただし、損金計上要件を満たしていない費用や償却限度額を超える修正はできません。
仕訳例
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仕入高の過少計上
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前期に仕入40,000円を計上していたが、実際は60,000円
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当期の仕訳:
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棚卸高の過大計上
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前期に500,000円と計上した棚卸高が、実際は50,000円
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当期の仕訳:
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未精算の旅費交通費
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前期分の旅費100,000円を当期精算
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当期の仕訳:
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修正申告をしない場合のリスク
前期損益修正益・損を計上しても、修正申告や更正の請求を怠ると、税務調査で指摘されるリスクがあります。延滞税、過少申告加算税(10%)、意図的な仮装隠蔽と認定されると重加算税(最大35%)も課される可能性があります。リスク回避のためにも、修正申告は必ず正しく行いましょう。
過年度の修正を行う際の注意点
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修正の根拠資料をしっかり保管
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税務署に説明できるように整理
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修正申告や更正の請求を適切に提出
中小企業でも過年度の修正は慎重に行うことが求められます。
まとめ
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前期損益修正益:前期の収益不足を当期で修正する勘定科目
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前期損益修正損:前期の費用や損失不足を当期で修正する勘定科目
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中小企業は特別利益・特別損失として計上可能、大企業は利益剰余金で修正
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税務上は修正申告や更正の請求で適切に対応
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修正申告を怠ると延滞税や加算税のリスクあり
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