保険の収支や仕組みに関心がある方は、「危険差益(きけんさえき)」という言葉を見聞きしたことがあるかもしれません。
一見むずかしそうな言葉ですが、保険会社の利益構造を理解するうえで欠かせないキーワードです。
この記事では、危険差益とは何か、その仕組みや関係する用語との違いを、保険初心者にもわかりやすく解説します。
✅ 危険差益とは?簡単に言うと…
危険差益とは、保険会社が見積もった損害額よりも、実際の損害額が少なかったときに発生する利益のことです。
たとえば、保険会社が「1年間で契約者のうち100人が事故に遭う」と想定して保険料を設定したところ、実際には80人しか事故に遭わなかった場合――
この「想定より事故が少なかった差額分」が、危険差益として保険会社の利益になります。
✅ 危険差益が発生する仕組み【具体例】
🔹 具体例:ある自動車保険の場合
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保険会社が予測した事故率(予定損害率):10%
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実際に事故が起きた率:7%
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予定より3%分、損害支払いが少なかった
この差の3%が「危険差益」です。
つまり、契約者の事故や損害が想定より少なかったほど、保険会社にとっては利益になるというわけです。
✅ 損害保険における「三利源」とは?
危険差益は、損害保険会社が得る代表的な利益のひとつで、「三利源(さんりげん)」と呼ばれる以下の3つの利益のうちの1つです。
利益の種類 | 内容 |
---|---|
危険差益(きけんさえき) | 実際の損害率が予定より低かった場合に発生 |
利差益(りさえき) | 運用収益が予定より多かった場合に発生 |
費差益(ひさえき) | 実際の事業費が予定より少なかった場合に発生 |
このように、危険差益は「事故や病気が少なかったこと」による利益であり、他の2つの利益とあわせて保険会社の収益を構成しています。
✅ 生命保険では「死差益」と表現される
損害保険では「危険差益」という言葉を使いますが、生命保険では同じ仕組みを**「死差益(しさえき)」**と呼びます。
たとえば:
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予定死亡率:1.0%(1,000人中10人が死亡する想定)
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実際の死亡率:0.7%(7人が死亡)
この差によって生まれる利益が「死差益」です。
損害保険=危険差益、生命保険=死差益と覚えると整理しやすいでしょう。
✅ 危険差益と加入者の関係は?
「保険会社が利益を出しているなら、自分は損してるのでは…?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、危険差益はあくまで“リスクが現実化しなかった”ことによる余剰です。
実際には以下のようなメリットがあります:
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危険差益が大きいと、将来的に保険料の引き下げにつながることもある
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一部の保険では、配当金として契約者に還元されるケースもある(配当付き保険)
つまり、保険会社の健全経営は、最終的に契約者にとってもプラスになることがあるのです。
✅ まとめ|危険差益は「リスクが起きなかったこと」で生まれる利益
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危険差益とは、見込んでいた損害額より実際の損害額が少なかったときに出る利益
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損害保険では「三利源」のひとつで、他に「利差益」「費差益」がある
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生命保険では似た仕組みを「死差益」と呼ぶ
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保険会社の経営安定や将来的な保険料の調整につながる重要な収支項目
保険は“万が一”に備えるものですが、その“万が一”が起こらなかったことも、保険制度の中ではしっかり評価され、経営や契約者に利益として反映される仕組みがあります。
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