企業の損益計算書を読むと、「営業利益」「経常利益」といった項目が並び、その下に「営業外収益」「営業外費用」が記されています。
営業外収益は、「本業以外で得る収益」を示す重要な指標であり、正しく理解できれば 収益構造改善 や 財務分析 にも役立ちます。
本記事では、営業外収益の意味・勘定科目例・扱う際の注意点を具体例とともに解説します。
目次
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営業外収益とは?本業との違い
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営業外収益の主な勘定科目例
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営業外収益が多い場合のリスク・注意点
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実務上のチェックポイント
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まとめ:営業外収益を正しく扱う意義
1. 営業外収益とは?本業との違い
営業外収益(えいぎょうがいしゅうえき) とは、
企業の本業以外の活動から得られる収益で、主に財務活動や投資活動などから発生するもの
を指します。
本業(営業活動)で得られる収益は、通常「売上高」に計上されます。
一方、営業外収益は、売上高とは別枠で扱われ、経常利益の計算に加算されるものです。
本業収益 vs 営業外収益の判断基準
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本業収益(売上高):定款や会社の主目的事業に該当する収益
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営業外収益:本業収益と見なされない、臨時的または資金運用的な収益
たとえば、不動産賃貸業が主たる目的の会社では、建物の賃料収入は本業収益に計上される可能性があります。
しかし、主たる目的が製造業である会社が保有不動産を貸して得る賃料は、営業外収益となるのが一般的です。
2. 営業外収益の主な勘定科目例
営業外収益の勘定科目としてよく使われるものを、代表例を挙げて説明します。
勘定科目 | 内容 |
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受取利息 | 銀行預金や貸付金などから得る利息収入 |
受取配当金 | 保有株式から配当を受け取った収入 |
有価証券利息 | 国債・社債など債券保有に対する利息収入 |
有価証券売却益 | 売買目的有価証券を売却して得た利益 |
有価証券評価益 | 決算時点での有価証券の時価上昇分の評価差益 |
不動産賃貸料 | 保有不動産の賃貸による収益(本業以外の場合) |
仕入割引 | 仕入先から支払期日前に支払ったことで得た割引額 |
為替差益 | 為替変動を利用した取引から得られる差益 |
雑収入 | 上記以外、かつわずかな額など、分類が困難な収益 |
これらの営業外収益は、損益計算書上では「営業利益」に加算され、経常利益を算出する際のプラス要素となります。
3. 営業外収益が多い場合のリスク・注意点
営業外収益が多いことが一見良さそうに見えても、注意すべき点があります。
✅ 売上高にできる収益を営業外収益に回している可能性
本来「売上高」に計上すべき収益を、勘定科目の扱いで「営業外収益」にしてしまうケースがあります。
例えば、サービス収入・ロイヤリティ収入・手数料収入など、本業性があるものを営業外収益に分類していると、売上高が抑えられ、本業力が過小評価される恐れがあります。
✅ 販売管理費と相殺できる営業外収益の見落とし
たとえば、会社が借り上げ社宅を所有しており、家賃を支払っているとします。支払家賃は通常「販売費及び一般管理費」に入りますが、同じ建物を他社に賃貸して受取家賃を得ているなら、それが営業外収益になります。
このように、支出と収入を同じ性質で相殺できる可能性を見落とすと、利益の見せ方にゆがみが出ることがあります。
✅ 銀行評価や外部からの評価の影響
銀行などが企業の信用力を評価する際、収益性や安定性を重視します。
営業外収益が収益構造の大部分を占めていると、「本業力が弱い」「収益構造に偏りがある」と見なされる可能性があります。
4. 実務上のチェックポイント
営業外収益を正しく扱うための実務的なチェックポイントをまとめます。
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定款や事業目的を確認し、本業かどうかを判断する
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勘定科目の分類にミスがないか見直す(特に手数料・ロイヤリティ等)
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収益と支出のバランスをチェックし、相殺可能性を確認
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将来的な持続性を考える(営業外収益は不安定なものが多いため)
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銀行評価・外部への説明を意識する(本業収益と営業外収益の割合等)
5. まとめ:営業外収益を制する者は収益構造を制す
営業外収益は、企業の損益構造や収益力を分析するうえで不可欠な要素です。
ただし、それを「本業力の補填」とみなすことは危険であり、本業収益とのバランスや分類の正確性を意識することが重要です。
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営業外収益=本業以外の収益
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主な科目例:受取利息、配当、有価証券売却益、不動産賃貸料など
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多すぎる営業外収益にはリスクあり
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分類ミス・相殺機会の見落としに注意
本業を強くしながら、営業外収益を適切に扱うことで、健全でバランスの良い収益構造を築きましょう。
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