貸借対照表の中で「負債」という言葉を見ると、「借金」を思い浮かべる人も多いかもしれません。
しかし会計上の負債は、借金だけでなく「未払金」「買掛金」などの返済義務がある項目すべてを指します。
本記事では、その中でも固定負債について、流動負債との違いや貸借対照表における代表的な勘定科目などを、初心者にもわかりやすく解説します。
負債とは何か
まず、貸借対照表における「負債」とは、企業が他者に対して負っている返済義務のある債務を意味します。
銀行からの借入金だけでなく、買掛金・未払金・未払費用なども負債に含まれます。つまり、単なる「借金」というよりも、「将来支払いが必要な義務」を示す項目です。
負債は、企業の財務状況や資金繰りを把握する上で欠かせない要素です。そのため、会計処理では「流動負債」と「固定負債」に分けて管理されます。
固定負債とは?
固定負債とは、支払期限が1年を超える負債を指します。
つまり、短期間で返済する必要がない、比較的長期にわたる負債のことです。
企業は固定負債を活用することで、長期的な資金を確保し、安定した経営基盤を築くことができます。
代表的な固定負債としては、社債・長期借入金・繰延税金負債などがあります。
流動負債との違い
負債は、以下の2つの基準で「流動負債」と「固定負債」に分類されます。
1. 正常営業循環基準
企業の通常の営業サイクル(仕入れ → 販売 → 回収)に含まれる負債は「流動負債」とされます。
このサイクル外にあるもの(例:長期借入金や社債など)は、次の1年基準で判断します。
2. 1年基準
決算日の翌日から1年以内に返済・支払いが発生するものは「流動負債」、それ以降に返済するものは「固定負債」となります。
たとえば、返済期間が5年の借入金であっても、残り1年分の返済部分は流動負債に振り替えられます。
固定負債に含まれる主な勘定科目
ここでは、代表的な固定負債の例を紹介します。
社債
企業が投資家などから資金を集めるために発行する債券です。
返済期限が1年以上の場合、固定負債に分類されます。
ただし、返済期限が近づいて1年以内となった時点では、流動負債に振り替える必要があります。
長期借入金
返済期限が1年を超える借入金を「長期借入金」といいます。
金融機関からの設備投資資金などがこれにあたります。
短期的な資金繰りを目的とした借入金(1年以内)は「短期借入金」として流動負債に計上します。
預かり保証金
取引先や賃貸契約で受け取る敷金・保証金などのうち、返還まで1年以上の期間があるものは固定負債に含まれます。
たとえば店舗やオフィス賃貸の敷金などが該当します。
繰延税金負債
会計上の利益と税務上の所得に一時的な差が生じる場合に発生する負債です。
税効果会計に基づいて処理され、貸借対照表上では固定負債に計上されます。
固定負債が企業経営に与える影響
固定負債は、企業の長期的な資金調達手段として重要な役割を果たします。
適切に管理すれば、設備投資や新規事業への投資を支える安定した資金源となります。
一方で、過剰な固定負債は返済リスクを高め、財務体質の悪化につながるおそれもあります。
そのため、企業は資金計画やキャッシュフローを十分に考慮しながら、負債のバランスを保つことが大切です。
まとめ
固定負債とは、1年を超えて返済する義務のある負債であり、企業の財務安定性を支える重要な項目です。
流動負債との違いを理解し、正確に分類・計上することで、経営判断や資金繰りをより的確に行うことができます。
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