企業活動の中で、不要になった建物や設備などの有形固定資産を廃棄するときに発生する損失を「固定資産除却損」と呼びます。
正しい理解と仕訳処理を行うことで、会計上の整合性を保ち、節税にも役立てることが可能です。
この記事では、固定資産除却損とは何か、仕訳方法や節税効果について初心者にもわかりやすく解説します。
固定資産除却損とは
固定資産除却損とは、会社の事業で不要となった有形固定資産を廃棄・除却する際に発生する損失のことです。
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使用を中止した建物や機械設備などの帳簿価額を損失として計上
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特別損失として管理し、財務諸表に反映
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無形固定資産や投資目的の有価証券は対象外
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実際の現金流出は伴わない
計算方法は以下の通りです。
固定資産除却損 = 取得原価 − 減価償却累計額 − 廃材価値(ある場合)
固定資産除却損の節税効果
固定資産除却損を計上すると、当期の課税所得を減らすことができるため、節税効果が期待できます。
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期末に固定資産台帳を確認し、使われなくなった古い資産を優先的に除却
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特に耐用年数が長い資産(10年以上)で残存簿価があるものをチェック
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実際に廃棄していることが原則。廃棄前提の計上は不可
節税を意識する場合は、除却タイミングと資産管理の両方を適切に行うことが重要です。
固定資産除却損の仕訳方法
状況に応じて3パターンに分けて処理します。
1. 一般的な除却の場合
例:取得価額80万円、減価償却累計30万円、当期減価償却15万円で除却
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直接法
借方:減価償却費 15万円 / 貸方:固定資産 50万円
借方:固定資産除却損 35万円 -
間接法
借方:減価償却累計額 30万円 / 貸方:固定資産 80万円
借方:減価償却費 15万円
借方:固定資産除却損 35万円
2. 除却費用が発生する場合
例:廃棄費用8万円がかかる場合
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直接法
借方:減価償却費 15万円 / 貸方:固定資産 50万円
借方:固定資産除却損 43万円 / 貸方:現金 8万円 -
間接法
借方:減価償却累計額 30万円 / 貸方:固定資産 80万円
借方:減価償却費 15万円
借方:固定資産除却損 43万円 / 貸方:現金 8万円
3. 廃材価値が生じる場合
例:廃材価値12万円がある場合
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直接法
借方:貯蔵品 12万円 / 貸方:固定資産 50万円
借方:減価償却費 15万円
借方:固定資産除却損 23万円 -
間接法
借方:貯蔵品 12万円 / 貸方:固定資産 80万円
借方:減価償却累計額 30万円
借方:減価償却費 15万円
借方:固定資産除却損 23万円
固定資産管理のポイント
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表計算ソフトだけでの管理は限界。クラウド型固定資産管理システムの導入で効率化可能
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固定資産台帳や減価償却計算を適切に管理することで、除却損の計上漏れを防止
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経理担当者向けのガイドやテンプレートを活用し、仕訳処理を簡単に
まとめ
固定資産除却損とは、不要になった有形固定資産を廃棄した際に発生する損失です。正しい計上と仕訳を行うことで、節税効果を得つつ、会計処理の透明性を保つことが可能です。
ポイントは以下の通りです。
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固定資産除却損は特別損失として管理
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節税目的で計上する場合は実際に除却されていることが前提
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状況に応じた仕訳(直接法・間接法)で正確に処理
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固定資産台帳を適切に管理し、古い資産の除却を定期的に確認
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