国際会計基準とは

国際会計基準とは?日本基準との違いや導入メリットを徹底解説

グローバル化が進む中で、「国際会計基準(IFRS)」という言葉を耳にする機会が増えています。
日本でも上場企業を中心に、IFRSの任意適用を進める動きが見られますが、実際にどのような基準なのか、そして日本会計基準との違いはどこにあるのでしょうか?

この記事では、会計実務経験をもとに、IFRSの基礎・日本基準との違い・導入のメリットとデメリット・導入方法まで、初心者にもわかりやすく解説します。

🔍 IFRS(国際会計基準)とは?

IFRS(International Financial Reporting Standards)とは、「国際財務報告基準」とも呼ばれ、
世界中の企業が共通のルールで財務諸表を作成できるように制定された国際的な会計基準です。

この基準は、IASB(国際会計基準審議会)によって策定されており、EU諸国をはじめ、世界140か国以上が採用しています。
特にEU域内では、上場企業に対してIFRSの適用が義務化されています。

⚖️ IFRSの特徴:日本基準との大きな違い

1. 原則主義 vs. 細則主義

  • IFRSは「原則主義」を採用しています。
     → 会計処理の基本原則を定め、詳細なルールは企業の判断に委ねられます。

  • 日本会計基準は「細則主義」です。
     → 個別具体的なルールが明確に示され、判断の余地が少ない点が特徴です。

原則主義のIFRSでは、企業が自ら判断して経済実態を反映する必要があるため、経理担当者や会計士の専門的な判断力が求められます。

2. 貸借対照表重視 vs. 損益計算書重視

IFRSは貸借対照表重視の考え方を採用しています。
一方、日本基準は損益計算書重視で、当期利益を中心に評価する傾向があります。

つまりIFRSでは、「資産-負債=純資産」というバランスシートの健全性がより重視されます。

3. 主な項目の違い(比較表)

会計項目 日本基準 IFRS
のれん 20年以内で定額償却 非償却(毎期減損テスト)
研究開発費 発生時に全額費用処理 開発費は要件を満たせば資産計上可能
非上場株式の評価 取得原価 時価評価
収益認識基準 出荷基準が一般的 履行義務が充足した時点(検収基準)

このように、IFRSは「経済実態をより正確に反映する」ことを目的としており、国際比較がしやすい財務諸表を実現しています。

💡 IFRS導入のメリット

① 海外投資家からの信頼向上・資金調達の多様化

IFRSを導入すれば、海外投資家にとって財務内容が理解しやすくなり、資金調達のチャンスが広がります
世界共通の基準に基づいた報告書は、グローバル市場での信用度向上にもつながります。

② 海外子会社との比較・管理が容易に

海外子会社もIFRSで統一すれば、グループ全体で同一の会計基準による財務管理が可能です。
経営判断やパフォーマンス比較が容易になり、経営の透明性と迅速な意思決定を支援します。

③ 財務資料の変換が不要に

従来は「日本基準 → 海外基準」への変換が必要でしたが、IFRSを導入すれば変換作業が不要になります。
国際取引や海外上場を目指す企業にとって、大きな業務効率化効果が期待できます。

⚠️ IFRS導入のデメリット

① 導入コスト・教育コストが高い

会計システムの再構築や社内研修、外部専門家への依頼など、初期費用が大きくなる傾向があります。

② 日本基準とのコンバージョン作業が必要

IFRSを連結財務諸表に適用しても、個別財務諸表は日本基準で作成する必要があります。
したがって、連結時に変換作業(コンバージョン)が発生します。

③ 評価項目が増え、業務負担が拡大

時価評価や無形資産の公正価値評価など、判断を要する項目が増え、経理部門の負担が増大します。

🧭 IFRS導入の進め方(3ステップ)

  1. 準備段階
     導入目的・適用範囲を明確にし、スケジュールと体制を整備します。

  2. 導入段階
     モデル財務諸表を作成し、IFRS対応のシステム・方針を構築します。

  3. 運用段階
     新基準での決算・開示を実施し、改善点を洗い出して定着を図ります。

 

🤝 IFRS適用企業と取引する際の注意点

  • 契約時に収益認識の基準を明確化する
     出荷基準ではなく「履行義務が充足した時点」で認識される場合が多いため、契約書に明示することが重要です。

  • 資産評価の確認
     IFRSでは非上場株式や無形資産も時価評価されるため、取引金額の妥当性を慎重に確認しましょう。

 

🇯🇵 日本におけるIFRS導入の現状

日本では、2009年に「日本版IFRSロードマップ」が公表され、
2010年から任意適用が可能になりました。
2024年現在では、トヨタ・ソニー・三菱UFJなど約250社がIFRSを採用しています。

政府方針としては「強制適用」ではないものの、今後グローバル展開を視野に入れる企業にとって、
IFRSの理解と対応は不可欠といえるでしょう。

まとめ:IFRSは「国際競争力を高めるための会計言語」

ポイント 内容
IFRSとは 世界共通の財務報告基準(IASBが策定)
日本基準との違い 原則主義・貸借対照表重視・時価評価
メリット 国際資金調達・経営透明性・業務効率化
デメリット 導入コスト・システム変更・教育負担
日本の現状 任意適用中、上場企業を中心に採用拡大

さらに参照してください:

寡婦控除とは?要件・金額・手続き方法をわかりやすく解説