寡婦控除とは

寡婦控除とは?要件・金額・手続き方法をわかりやすく解説

夫や妻と死別・離婚した後、再婚していない方は「寡婦控除(かふこうじょ)」を受けられる場合があります。
この記事では、寡婦控除の要件や控除額、手続きの流れ、そしてよく混同される「ひとり親控除」との違いを、税理士の視点でわかりやすく解説します。

🧾 寡婦控除とは?

寡婦控除とは、夫と死別・離婚し、再婚していない女性が一定の条件を満たす場合に、所得税や住民税の負担を軽減できる制度です。

かつては「寡婦控除」と「寡夫控除」がありましたが、令和2年分以降は「ひとり親控除」が新設され、「寡夫控除」は廃止されました。
そのため、現在は「寡婦控除(女性向け)」と「ひとり親控除(男女共通)」の2つが存在します。

✅ 寡婦控除の対象となる人(要件)

次のいずれかに該当し、事実婚関係にある人がいない場合に「寡婦控除」を受けられます。

  1. 夫と離婚した後、婚姻をしていない人で、
     ・扶養親族がいる
     ・合計所得金額が500万円以下の人

  2. 夫と死別した後、婚姻をしていない人で、
     ・合計所得金額が500万円以下の人

  3. 夫の生死が不明な一定の人で、
     ・合計所得金額が500万円以下の人

💡 合計所得金額とは、給与所得だけでなく事業所得や不動産所得なども含めた合計金額を指します。

💰 寡婦控除の金額はいくら?

寡婦控除の金額は 27万円 です。
所得税率が5%の場合、
「27万円 × 5% × 1.021(復興特別所得税)」で 約13,700円の税金が軽減されます。

控除額はそれほど大きくないように見えますが、住民税も軽減されるため、トータルでの負担軽減効果は大きくなります。

🧮 寡婦控除を受けるための手続き

寡婦控除を受ける方法は、年末調整確定申告の2通りです。

● 年末調整で受ける場合

会社員など給与所得者は、勤務先で提出する「扶養控除等申告書」の【寡婦】欄にチェックを入れるだけでOKです。
年末調整時に自動的に寡婦控除が反映されます。

● 確定申告で受ける場合

個人事業主や不動産所得がある方などは、自分で確定申告書を作成します。
確定申告書第一表に「寡婦控除27万円」と記入し、第二表で「死別」や「離婚」などの理由を明記します。

提出時には、住民票や戸籍謄本など、状況を確認できる書類の提出を求められる場合もあります。

👩‍👧 ひとり親控除との違い

「寡婦控除」と「ひとり親控除」は似ていますが、次のような違いがあります。

比較項目 寡婦控除 ひとり親控除
対象者 婚姻歴がある女性 男女問わず、子どもを扶養する人
控除額 27万円 35万円
所得上限 500万円以下 500万円以下
扶養条件 子以外の親族も可 扶養親族が子であること

つまり、シングルマザー・シングルファーザーであれば「ひとり親控除」が適用され、
扶養親族が子以外の場合には「寡婦控除」が該当します。

👵 年金制度における「寡婦」の扱い

税法上の寡婦とは別に、公的年金制度でも「寡婦年金」や「中高齢寡婦加算」といった制度があります。

制度名 対象者 支給開始年齢 主な要件
寡婦年金 自営業者の妻(第1号被保険者の遺族) 60~65歳 婚姻10年以上、夫の保険料納付10年以上など
中高齢寡婦加算 会社員・公務員の妻(第2号被保険者の遺族) 40~65歳 同一生計の子がいない、または子が成人した場合など

制度によって支給内容や条件が異なるため、自分の状況を確認しておきましょう。

⚠️ 適用を受ける際の注意点

寡婦控除やひとり親控除を受ける際には、以下の点に注意が必要です。

  • 「合計所得金額500万円以下」であること

  • 「事実婚関係にある者」がいないこと

  • 控除対象となる「扶養親族」の定義を正しく理解していること

条件を満たさない場合、控除が無効になる可能性もあります。

💡 まとめ|寡婦控除を正しく理解して税負担を軽減しよう

寡婦控除は、配偶者と死別・離婚した女性を支援する重要な制度です。
控除の金額は27万円と限定的ですが、所得税・住民税の両方に効果があります。

もし「自分が寡婦控除の対象になるか分からない」「年末調整での書き方が不安」という方は、税理士や会計ソフトを活用するのがおすすめです。

さらに参照してください:

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