建設業の会計処理では、工事が長期間にわたることが多く、いつ収益を計上するかが重要な論点になります。
その際に用いられる代表的な方法の一つが「工事完成基準(こうじかんせいきじゅん)」です。
本記事では、工事完成基準の意味や特徴、工事進行基準との違い、適用場面をわかりやすく解説します。
🔸 工事完成基準とは
工事完成基準とは、建設工事に関する収益と費用を工事が完成した時点でまとめて計上する会計処理方法です。
つまり、工事が完了し、引き渡しを行った時点で初めて売上を認識します。
この基準では、工事期間中に発生した費用は一旦「仕掛品(しかかりひん)」として資産計上し、工事完成後に収益と相殺して損益を算定します。
🔸 工事進行基準との違い
もう一つの代表的な方法として「工事進行基準」があります。
両者の違いは以下のとおりです。
| 比較項目 | 工事完成基準 | 工事進行基準 |
|---|---|---|
| 収益の計上時期 | 工事が完成した時点 | 工事の進行状況に応じて段階的に計上 |
| 会計期間の影響 | 長期工事では収益が遅れる | 毎期に収益が発生する |
| 適用される主なケース | 短期工事、進行度の信頼性が低い工事 | 長期工事、進行度を正確に測定できる工事 |
たとえば、数ヶ月で終わる小規模な住宅リフォーム工事などでは工事完成基準が適しています。
一方で、橋梁・道路・大型施設など数年にわたる工事の場合は、進行状況を信頼性高く測定できるため「工事進行基準」が採用されます。
🔸 工事完成基準を採用するメリットとデメリット
✅ メリット
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会計処理が比較的簡単で、見積り誤差の影響を受けにくい
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工事の完成・引き渡しが明確なため、収益認識のタイミングが分かりやすい
⚠️ デメリット
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長期にわたる工事では、完成まで収益が計上されないため、期間損益の比較が難しくなる
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複数年度にまたがる場合、途中の経営成績を正確に反映できない可能性がある
🔸 適用上の注意点
工事完成基準を適用する場合、「工事が完成した」と認められる時点を慎重に判断する必要があります。
例えば以下のような基準が一般的です。
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契約上の主要な義務を履行している
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発注者による検収が完了している
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残作業が軽微である
これらの条件が整った段階で、収益を計上するのが会計上の原則です。
🔸 まとめ
工事完成基準は、建設業会計の基本的な収益認識方法のひとつであり、短期工事や進行状況の信頼性が低い案件に適しています。
一方、長期工事では工事進行基準を用いることで、より期間損益を適切に反映できます。
会計処理を選択する際には、工事の性質・期間・信頼性を考慮し、自社にとって最も合理的な基準を採用することが重要です。
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