役員退職慰労金とは

役員退職慰労金とは?計算方法・功労加算・税金・支給手続きの完全ガイド

退職時に会社から支給される「役員退職慰労金」は、取締役や監査役などの役員に対する特別な退職金です。

会社にとっても役員にとってもメリットがある一方、支給手続きや計算方法を正しく理解しておかないと、税務上のトラブルにつながる可能性があります。

この記事では、役員退職慰労金の基本から計算方法、功労加算、税金面の注意点、実務上の手続きまで、初心者にもわかりやすく解説します。

役員退職慰労金とは?

役員退職慰労金とは、取締役や監査役などの役員が退任する際に支払われる退職金のことです。一般の従業員が勤続年数や功績に応じて受け取る退職金と同じく「過去の勤労の対価」として支給されますが、以下の点で異なります。

  • 退職金規程に基づく必要はない

  • 支給方法や支給時期は定款に記載するか、株主総会で決議する

実務上は、多くの企業が定款ではなく株主総会で具体的な支給額を決議しています。

役員退職慰労金のメリット

法人側のメリット

  1. 節税効果
     支給した役員退職慰労金は損金算入できるため、法人税の負担を軽減できます。

  2. 社会保険料負担なし
     役員退職慰労金は社会保険料の対象外のため、追加コストがかかりません。

役員側のメリット

  1. 税負担の軽減
     退職所得として課税され、計算式は以下の通りです。

(役員退職慰労金支給額-退職所得控除額) × 1/2 = 退職所得金額
退職所得金額 × 所得税率 - 控除額 = 所得税
  1. 分離課税で低い税率
     退職所得は他の所得と合算されず、低い税率で課税されます。

 

役員退職慰労金のデメリット

法人側にとっての注意点は次の2点です。

  1. 資金負担の増加
     支給額が大きい場合、企業の資金繰りが悪化する可能性があります。

  2. 株主総会での決議が必要
     決議がスムーズに進まない場合、社内混乱や職場環境の悪化につながることがあります。

 

役員退職慰労金の計算方法

役員退職慰労金の計算には主に2種類の方法があります。

1. 功績倍率法

役員退職慰労金 = 退職時の月額報酬 × 勤続年数 × 功績倍率

例:
退職時月額報酬50万円、勤続30年、功績倍率2.0の取締役の場合
50万円 × 30年 × 2.0 = 3,000万円

平均的な功績倍率の目安

役職 平均功績倍率
代表取締役(創業者) 3.0~3.4
代表取締役 2.4~3.2
専務取締役 2.2~2.7
常務取締役 2.0~2.6
取締役 1.2~2.0
監査役 1.0~1.6

2. 1年あたり平均法

役員退職慰労金 = 1年あたり退職金 × 勤続年数
  • 同規模・同業種の平均データに基づく算出方法

  • 裁判等で適正額を求める場合に利用されることが多い

 

功労加算金とは?

特に功績のある役員に対しては、上記の計算額に功労加算金を上乗せできます。

功労加算金 = 役員退職慰労金 × 30%(目安)

※上限は明確に定められていませんが、一般的には30%程度が多いです。

役員退職慰労金にかかる税金

  • 退職所得控除を引き、1/2にして課税

  • 分離課税により他の所得と合算されず低税率

  • 適正額を算出しないと、税務調査で否認されるリスクあり

 

役員退職慰労金の支給手続き

  1. 定款に規定
     定款で役員退職慰労金の支給について定める

  2. 株主総会で決議
     定款に規定がない場合、株主総会で支給の可否・金額を決議

  3. 取締役会への一任
     実務上、多くの企業は取締役会に決定を委任するケースが多い

 

注意点

  • 支給額が極端に高いと、税務署から否認される可能性があります

  • 同業・同規模のデータに基づき、無理のない金額を設定することが重要です

  • 成果主義の浸透により、役員退職慰労金を廃止する企業も増えています

 

まとめ

役員退職慰労金は、会社と役員の双方にメリットがある制度です。

  • 法人税の節税効果

  • 役員の税負担軽減

  • 支給手続きの正確さが重要

一方で、適正額の設定や手続きの漏れがあると、税務上のトラブルや社内混乱を招く可能性があります。自社の状況を踏まえ、適切に役員退職慰労金を活用しましょう。

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