日々の経理業務のなかで、もっとも使用頻度が高い勘定科目のひとつが「支払手数料」です。
銀行手数料や仲介料など、さまざまな費用を処理するために使われるため、正しく理解しておくと経理のミスをぐっと減らせます。
この記事では、支払手数料として処理できる費用、よくある仕訳例、消費税の扱い、そして雑費や支払報酬との違いまで、初めての方でも迷わず運用できるよう丁寧に解説します。
経理初心者の方、自社の会計処理を見直したい方にもおすすめの内容です。
支払手数料とは何を指す科目?
支払手数料とは、会社の取引に伴い発生する各種手数料をまとめて処理するための勘定科目です。
銀行の振込手数料や仲介手数料など、直接的な売上ではなく一般管理費に該当する費用が中心です。
支払手数料のポイントを整理すると次のとおりです。
・一般管理費として扱う
・直接の売上に関係しない手数料が対象
・基本的には消費税の「課税取引」
・海外企業との取引では「課税対象外」になることもある
名前が似ている「販売手数料」は売上に直結する費用なので、まったく別の勘定科目として扱います。
支払手数料として処理できる主な費用
実際に支払手数料に分類される代表的な費用は次のとおりです。
・銀行の振込手数料
・代引き手数料
・証明書類の発行手数料
・仲介料
・事務手数料
・登録・解約手数料
不動産関連では、礼金やルームクリーニング料を支払手数料として処理するケースもあります(礼金は20万円未満が原則)。
一方で、弁護士・税理士・司法書士・社労士など専門家への報酬は「支払報酬」。
販売のための費用は「販売促進費」。
この2つは支払手数料とは別管理なので要注意です。
支払手数料の仕訳例(ケース別)
支払手数料の代表的な仕訳を、ケースごとにわかりやすくまとめます。
1. 振込手数料を自社が負担する場合
【売掛金150,000円の入金、手数料550円を自社負担】
借方|貸方
—|—
普通預金 149,450|売掛金 150,000
支払手数料 550|
【買掛金150,000円の支払い時、手数料550円を自社負担】
借方|貸方
買掛金 150,000|普通預金 150,550
支払手数料 550|
2. 振込手数料を相手が負担する場合では計上しない
【売掛金150,000円の入金、手数料550円は相手負担】
借方|貸方
普通預金 150,000|売掛金 150,000
※自社は手数料負担なしのため「支払手数料」は使いません。
3. 不動産の販売仲介手数料
【不動産売却時に仲介手数料150,000円を支払った】
借方|貸方
支払手数料 150,000|普通預金 165,000
仮払消費税等 15,000|
※不動産購入時は「土地」や「建物」に加算されるため支払手数料では処理しません。
支払手数料と混同しやすい科目の違い
支払手数料は使いやすい反面、ほかの科目と混同されやすい特徴があります。
よくあるポイントを整理しておきましょう。
雑費との違い
雑費は金額が小さく、重要性の低い費用に限定して使います。
頻繁に発生するものや、経営への影響が大きい費用を雑費で処理すると、税務調査で指摘されるリスクがあります。
例:ゴミ処理代、軽微なレンタル料、クリーニング代など
支払報酬との違い
弁護士・税理士など専門家への報酬は源泉徴収の対象であり、「支払報酬」で計上します。
性質が異なるため、支払手数料として処理してはいけません。
行政への手数料は「租税公課」
印鑑証明書・住民票の発行手数料などは行政サービスのため「租税公課」で処理します。
支払手数料の消費税区分
ほとんどの支払手数料は「課税取引」に分類され、仕入税額控除の対象になります。
ただし例外があり、例えば行政の証明書発行手数料は「非課税取引」です。
海外企業に支払う手数料は、取引内容に応じ「課税対象外」と判断されるケースもあるため要注意です。
まとめ:支払手数料は正しく使い分けることが大切
支払手数料は経理処理のなかで非常に利用頻度が高い勘定科目です。
ただし、似た科目が多いため、雑費や支払報酬、販売促進費、租税公課などと混同しないよう、性質を理解しておくことが重要です。
間違えやすい科目だからこそ、ルールを押さえて正確に仕訳することで、決算の精度は大きく向上します。
自社の経理体制を整えるうえでも、支払手数料の正しい扱いをしっかり身につけておきましょう。
さらに参照してください:

